こんにちは。小動物看護士(ドッグシッター/小動物介護士)の須永智尋です。ほんの数秒でガラリと気分が変わり、素っ気ない態度を取る猫。時にツンデレな態度で飼い主を翻弄し、魅了する猫にメロメロ! そんな愛猫家も少なくないでしょう。その猫の心変わりのきっかけとなる「スイッチ」はなんでしょう? 猫が持つ「やる気スイッチ」を紹介します。
欲求スイッチ
猫の気分を変える大きなスイッチは「欲求」です。「食欲」「睡眠欲」「排泄欲」「狩猟欲」こうした「欲求」が猫の行動意欲を決定します。
成猫は朝と夕方に食欲の波があります。食べたい! という欲求が起こると野良猫なら狩猟本能が刺激され、獲物を探し始めます。ペットならいつも食事をもらえる場所へ移動し、食べ物がないと飼い主の様子を伺います
食欲が満たされれば、排泄欲や睡眠欲が刺激されます。排泄したい時はソワソワ落ち着きがなくなり、何らかの理由で妨げられるとストレスを感じます。
また、猫は「寝子」と言われるように1日の2/3くらいは眠って過ごします。お気に入りの寝床を探し、毛繕いしてゆっくりリラックスします。これも妨げられるとストレスになります。
本能的な欲求は大きな原動力になります。この変化を把握しておくと「そろそろ甘えてくるかな?」「そろそろ放っておく方がいいかな」と猫の動きを予測することができますよ。
なお、繁殖期になると非常に強い「性的欲求」が他を上回ります。これは満たされないと非常に強いストレスになり、いろいろな問題行動の原因になります。満たしてあげることが難しい欲求ですが、予め不妊・去勢手術をする、異性に近付けないなど対処してあげてください。
環境スイッチ
欲求に従い、一定のルールのもとで生活していると猫はストレスを感じません。ですが、いつも全く同じルールで生活することは難しいですよね。
フードが変わった、来客があった、ペットが増えた、家族が変わった、家具の配置が変わった、留守番時間が長い、トイレの掃除ができていない、野良猫が室内飼いされ始めた、など。飼い主の都合だったり、猫の病気などが原因で「いつも」が変わることはよくあります。
こうした環境の変化が猫の気分を変えるスイッチになります。変化を好まない猫は「いつもと違う」ということをストレスに感じ、イライラや不安の気分が非常に強くなってしまいます。
関係によるスイッチ
野良猫の成猫には「甘え」という気分はほとんどありません。しかしペットの猫は成猫になっても「飼い主に甘えたい」という甘え気分が残っています。
この甘えの気分は「猫と人」の関係に大きく影響します。甘え気分が強いと人に擦り寄りますし、甘えたくない時は素っ気ない態度になります。
「構われたい」「構われたくない」この切り替えがスイッチになり、擦り寄ってきて撫でられることを喜んだり、しっぽをバタンバタンと振って「触らないで!」と怒ったりします。
甘えてきたけれど、鼻先を付き合わせただけで満足して離れていく。そんな素っ気ない時もあるので「構い過ぎ」に注意したいですね。「ちょっと物足りないんじゃないかな?」と飼い主が感じるくらいがちょうどいいと思っていた方がいいかもしれません。
時間スイッチ
猫は1日の中で時間帯によっても気分が違います。基本的に夜行性なので、夜や早朝はとても元気で活発、気持ちも高ぶった状態にあります。
一方、昼間は体力を温存するようにじっとしていて、ウトウトと寝ていることも多いですね。この時はそっとしておいて、求められるまで構わない方が無難です。
また、季節によっても気分のアップダウンがあります。春や秋は主に繁殖期になるので、とても活動的な時期です。夏も快活に動き回りますが、寒い冬は体力を温存する時期です。静かにあまり動かず過ごすことを好みます。
年齢が上がるにつれて落ち着いているように感じるひとつの理由として、繁殖意欲が低下して活動的になる期間が減ることがあげられます。
このような時間や季節による行動量も気持ちの変化のきっかけになりますよ。
お天気スイッチ
天気がいいとご機嫌で、天候が下り坂だとイライラしたり、雨だとグダグタやる気なく過ごす猫もいますよね。
雨の中では獲物の臭いや足音、気配を察知しにくいと言われ、狩りに不向きです。このため、雨の日は体力温存のために動かなかった、という野生の本能が今でも残っているため、天候によって猫の気分が変わると考えられています。
もちろん、室内飼いの猫にとって屋外の天候は大きな影響はありません。このため、必ずしも天候に気分が左右されることはないようですが、散歩に出る習慣があるペット猫は観察してみると面白い気分変化が見られるかもしれません。
いろんなスイッチを知ってベスト環境を
猫は気分屋ですが、気分が変わるきっかけはいろいろあります。欲求による変化、環境変化、人との関係、時間、季節、天気など、いろいろな条件が気分を変える引き金になります。
こうした小さな変化に敏感な猫がストレスなく過ごすには「変化が少ない環境」が重要になってきます。気分が変わるスイッチを察知し、より快適な環境を整えてあげてください。