無駄吠えのしつけは難しい
■無駄吠えにより飼えなくなることも
留守中の無駄吠えは犬の問題行動でもなかなか改善させることが難しいものの一つです。特に大人になってから治すことは非常に難しくなります。中には、無駄吠えがどうしようもないので、病院で声帯除去をしてもらったり、飼えなくなってしまう人もいるようです。
■罰によるしつけにはリスクがある
そんな困った行動であるが故、無駄吠えを止めるために、吠えると電流が流れたりハーブの液が飛び出るような罰を与える首輪を使っている人もいます。もちろんこれらに効果がないとは言いません。
しかし、この方法では場合によっては、効果がないだけでなく、恐怖心を植え付けてしまい、余計に吠えるようになったり、攻撃的になってしまう可能性があります。もちろんそういった罰は人道的にどうかという問題もあります。
しつけの基本は正の強化
■正の強化と負の罰
しつけには大きく分けて、「正の強化」と「負の罰」があります。
「正の強化」では、「正しい行動」をしたら良い思いをさせるというとで、その正しい行動を「強化」するものです。例えばトイレがうまく行ったときに思い切り褒めたり、おやつを与えることが正の強化に当たります。
一方、負の罰というのは「悪いこと」をした時に「罰」を与え、悪いことをすると嫌な思いをすると覚えてもらうものです。例えば、トイレ以外のところで粗相をしてしまった時に、怒ったり体罰を与えるようなことです。
■負の罰でのしつけは推奨されない
最近の犬のしつけの考え方は正の強化でしつけるというのが一般的であり、常識になりつつあります。無駄吠え防止首輪は負の罰に当たり、米国獣医動物行動研究会(AVSAB)は、負の罰でのしつけを推奨しないという正名を出しております。
テキサス大学で行われた留守中の無駄吠えに関する実験
■いつもの留守のシチュエーションを作る
では、無駄吠えに対する正の強化はどのようにすればいいのでしょうか?
テキサス大学のプロトポポバ博士の実験がそのヒントになります。彼は5頭の犬を使って無駄吠えの実験をしました。5頭の犬はいずれも飼い主さんがいないと無駄吠えをしてしまう子たちです。
まずは、部屋に犬を一人残していつもの留守番の状況を作り出し、隣の部屋で無駄吠えの様子を聞き、データを作成しました。
■オートフィーダーでおやつを与えることで5頭中3頭の無駄吠えを抑えることに成功
最初の観察でのデータに基づき、いつもより長く無駄吠えせずに待っていられた場合は、オートフィーダーからおやつを遠隔操作で与えるという実験を行いました。
この実験でうまく無駄吠えを抑えられたのは5頭中3頭でした。1頭は全く効果がなく、残り1頭は微妙な結果になりました。
オートフィーダーで無駄吠えを抑えることは可能
■2回の実験で完全に無駄吠えを抑えることが可能
例えば、ある犬は最初の観察時に4.4秒に一度吠えていました。そして、オートフィーダーによっておやつを与える10分間のテストでは、26.6秒に一度吠得るという結果になりました。さらにもう一度その実験を繰り返したところ、10分間の試験中に全く吠えませんでした。
たった10分、20分の実験で無駄吠えを抑えることが可能だったのです。
■間隔を伸ばしても吠えない犬が2頭
次のテストでは、おやつを与える時間を倍増させていき、吠えない時間を伸ばせるかどうかを検証しました。
すると、3頭中2頭の犬では10分間と20分間のテストで全く吠えないようになりました。もう1頭は途中まではうまく時間を伸ばせましたが、間隔が長くなると吠えてしまいました。
正の強化によるしつけをしてみよう
■正の強化の一つ、行動分化強化の有用性を証明
「この結果は『他行動分化強化(DRO)』と呼ばれるしつけの有用性を示している」と科学者は話します。つまり、吠えないという「正しい行動」でおやつがもらえるとわかることで、吠えない行動が「強化」されたということです。
■スマホ連動のオートフィーダーで留守番トレーニング
現在のところ、吠えないとおやつが出るという完全自動のオートフィーダーは販売されていませんが、スマホと連動させてトレーニングすることは可能です。
悪化させるリスクもなく、犬にも優しい「正の強化」によるしつけ。留守番に困っている飼い主さんはぜひやってみてくださいね。