こんにちは、獣医師の明石照秋です。
最近、人の寿命が長くなって、認知症の問題がよくニュースに取り上げられたりしていますね。人でよく話題になる認知症ですが、実はペットにもこの病気はあるんです。獣医療の進歩によって、動物も長生きするようになった結果、ペット界でもこの問題が出てくるようになりました。今回は犬の痴呆症の症状とその予防法に焦点を絞って解説していきます。
何歳ぐらいから発症するの?
これはもうそれぞれですね。人と同じように、亡くなるまで元気な子もいるし、不幸にもまだまだ若い頃から発症してしまう子もいます。ただ統計学上では、12才ぐらいから発症しだす子が増えてくるようですね。犬の12才は人の年齢でいうと、だいたい64歳ぐらいですから、もう立派なおじいちゃん、おばあちゃんですね。
また基本的に犬は認知症を発症しやすい動物だと言われています。なので、これから犬を飼おうかと思っている人は、愛犬が年を取ったら老後のお世話をすることになるかもしれない、ということを覚えておいてくださいね。
犬の認知症の症状は?
認知症の症状もその子によってそれぞれです。一概にこの症状が出たから認知症、と言えるわけではありません。
とはいえ、やっぱり認知症で現れやすい症状というのはある程度決まっているので、どんなものがあるのか見ていきましょう。また、人の認知症とよく似た症状が多いです。
■目的もなくふらふら歩いていることが多くなる
さっきから同じところをずっと歩いている、とか、壁にぶつかってそのまま歩けなくなる、のような行動は認知症のサインです。
認知症は今までできていたことができなくなる、または、今までとは違った行動をする、といった症状が出ることが多いです。このような行動が見られたら、認知症を疑いましょう。
■意味もなく吠えるようになる
今まで吠えグセのなかった子がよく吠えるようになった、というのも要注意です。これも今までとは違った行動をする、の1種ですね。
■ぼーっとしている時間が増える
ぼーっとしていても、尻尾や、動くものに対して目線が追うように動いている時は問題ないですが、近くを通ったものでも目で追わない、こんなことが増えてきたら要注意です。
■異常に食欲が増す
さっきご飯を食べたばかりなのに、もうご飯を欲しがってくる。ちょっと前には考えられないような量を食べている、という症状が出ることもあります。
こういった時は1回の量を減らして、ご飯の回数を増やすことで満足させてあげましょう。
■粗相をする
基本的に散歩中におしっこやうんちを済ます子が多いと思いますが、認知症になると、時間、場所を構わずしてしまうようになる子がいます。
対策としては、粗相をした場所は臭いも残らないよう、徹底的にきれいにし、あまりに頻度が多いようであれば、おむつをつけてあげることなども考えましょう。
■生活リズムが狂う
犬は朝起きて、夜に寝る、という人とほぼ同じ生活リズムで生活しています。しかし、認知症になるとこのリズムが狂ってしまう子もいます。
昼間はずっと寝ていて、夜になると活発になる、こんな行動パターンも認知症特有のものです。
■覚えた躾ができなくなる
前述のトイレに関してもそうですが、他にも、お手や待て、ができなくなることもあります。
犬の認知症の治療は?
認知症は脳細胞の変質や、命令を伝達する神経組織が衰退することによって起きると考えられています。これは年をとることによって起こるもので、一度死んだ脳細胞や神経が元に戻ることはありません。なので、認知症は一度発症してしまうと、後は進行していくだけなのです。
しかし、完治させることはできなくても、病気の進行を遅くしたり、食い止めたりすることは可能です。これには、薬を飲ませたりといった治療も行うのですが、なによりも大事なのは飼い主の協力です。
■新しい刺激が病気の進行を食い止める
認知症は脳になにか新しい刺激がないとどんどん進んでしまいます。動物の体は、使わない部位はどんどん衰えるようにできていて、それは脳でも一緒です。
人でも、寝てばっかりで、ちゃんと動かないとボケるよ! なんて言ったりしますよね。これは犬にも同じことが言えるのです。
犬も年をとると、子犬の時に見られた活発さは徐々になくなり、新しい刺激はなくなっていきます。これが認知症の発症に影響を与えていると考えられています。
そのため、飼い主が新しい遊びを考えてあげたり、時には散歩のルートを変えてみたり、知らない子と触れ合わせてみたりして、新鮮な体験をさせてあげる必要があるのです。
犬の認知症の予防法は?
これなら確実!という予防法はありませんが、効果があると考えられているのは、やっぱり新しい刺激を与えてあげることですね。
犬だって毎日、同じ繰り返しだと飽きてきますし、退屈を感じたりもします。そうならないように飼い主が気を配ってあげる必要があります。
とはいえ、気が進まないことをやるのは飼い主だって辛いでしょうから、共通の趣味、は少し変な言い方かもしれませんが、飼い主も愛犬も一緒に楽しめるようなことを見つけられるといいですね。