こんにちは。小動物看護士(ドッグシッター/小動物介護士)の須永智尋です。犬の寿命は年々長くなっていて、超小型犬の寿命は平成27年には15.67年になりました。犬は7~8歳でシニアになりますので、寿命の半分はシニア期になります。そんな犬の老後や介護について紹介します。
愛犬の老化度チェック!
犬も年齢を重ねてくると徐々に老化の兆候が出てきます。毎日、一緒に過ごしていると気付かないかもしれませんが、7~8歳くらいから少しずつ体の機能の衰えが見え隠れするようになります。次のチェック項目のうち、愛犬にはどれくらいYesがあるでしょう?
(1)散歩の歩く速度が落ちた(引っ張らなくなった)
(2)ハァハァと息をしながら散歩の途中で何度も立ち止まる
(3)散歩に行きたがらない、又はすぐに帰ろうとする
(4)階段を嫌う
(5)車や椅子に飛び乗れなくなった
(6)白髪や脱毛が目立つようになった
(7)イボやシミが目立つようになった
(8)アゴや口のラインが垂れてきた
(9)寝たり伏せたままの時間が長くなった
(10)音や呼びかけに反応しなくなった
(11)物によくぶつかる
(12)口臭が強くなり、歯石が目立ったり歯が抜けている
(13)食べる量が減った
(14)背骨が歪んできた
(15)同じ場所をウロウロ徘徊する
Yesが多ければ多いほど老化が進んでいます。老化による体の機能が衰えが原因だったり、病気が原因だったり、「なんとなく面倒」という心の老化が関係していたりします。
こうした日々の小さな変化に早く気付き、生活環境を整えてあげることで快適な老後を送ることができます。
老犬・シニアは何歳から?
犬のライフステージをみると、大体7~8歳頃からシニア犬になります。人の年齢と比べると、おおよそ次のようになります。
小型犬7~9歳=人40~50歳=大型犬5~7歳
小型犬11~13歳=人60~70歳=大型犬8~9歳
小型犬14歳=人70歳=大型犬10歳
小型犬より大型犬の方が老化が早いのが解りますね。日本ではトイプードルやチワワ、ミニチュアダックスフンドなどの小型犬が多いので、はっきりとした老化の兆候が見えてくるのは10歳を過ぎてからかもしれません。
ですが、老化は目に見える症状だけではありません。体の中や心など、飼い主が気付きにくい所でも変化が出てきます。ですから、大体7~8歳くらいから少しずつ老化対策を取ってあげましょう。
ペットフード協会の統計によれば、平成27年の犬の平均寿命は14.85歳です。超小型犬の平均寿命は15.67歳、中・大型犬は14.02歳と発表されています。
シニアの時期は数年間続きます。早めに対策を取ることで体の機能低下を遅くすることができ、より快適な時間を長く維持できるようになりますよ。
食事の内容を見直そう
年齢を重ねると「食べる量が減る」「固い物が食べられなくなる」「吸収力が低下する」こうした変化が出てきます。
胃腸の機能が落ちたり、歯肉炎・歯周病・歯が抜けるといった口のトラブルで食べられなくなってきます。自力で食事をして栄養を取り込めなくなると一気に体力が低下します。
このため「食欲を刺激する」「少量で効率よく必要な栄養を吸収できる」「柔らかいフードにする」といった工夫が必要になってきます。
多くのペットフード会社が7歳を過ぎた頃から利用できる老犬用フードを販売していますね。脂肪控えめで高タンパクだったり、粒が小さく柔らかいものだったり、内臓機能に配慮したミネラルバランスだったりします。
7歳、8歳になったから、といって直ぐに老犬向けのフードに切り替える必要はありませんが、体調に合わせて少しずつフードを変えていくようにしましょう。
また、手作りフードをドライフードに混ぜて食欲アップを図ったり、かさ増しして満足感を得ながらカロリーを落とす、スープ状にして飲み込みやすくする、という風に愛犬に合った工夫をするのもいいですね。
運動は「体を守り維持する運動」に変える
老犬になっても散歩は続けたいものです。外へ出ることは気分転換になりますし、体の機能維持には継続的な運動が欠かせません。
ただ、運動といっても筋肉を作るような激しい運動は必要ありません。「今の体の機能や筋肉を維持するための運動」になります。
ハァハァと苦しそうに行きをしたり、座り込んでしまう場合は運動が愛犬に合っていない可能性があります。少し運動量や内容を見直すようにしましょう。
また、首輪をハーネスに変えたり、レインコートや防寒着を利用する、できるだけ土の上で遊ぶ(足腰に負担がかからないようにする)といった工夫もしてください。交通量が多い道を避けたり、多くの犬や人とすれ違うコースをやめるような工夫もいいですね。
愛犬の歩調に合わせてゆっくりと歩き、ボールを体の直ぐ傍まで転がしてあげる、などの遊びを加えながら、無理せず体を動かすようにしましょう。歩行が難しい場合は犬用カートなどを利用するといいですよ。
バリアフリーエリアを確保しよう
老化が進むと、視力が低下したり、耳が遠くなったりします。認知症のような症状が出てきて徘徊したり、排泄機能が低下してオムツが必要になることもあります。
こうした犬の安全を確保するためには、ぶつかったり、つまずいて転んだり、転落したり、誤飲などの危険がない、安全なエリアが必要になります。
部屋の一部をフェンスで囲ったり、広めのケージを使うなどして「バリアフリーエリア」を作ってあげましょう。この時に「お気に入りの場所」を自由に使えるような工夫をしてあげるといいですね。
老犬は脱臼したり、骨折すると治りが悪く、後遺症が残ることがあります。また、排泄機能が低下すると、部屋の至る所を汚してしまう可能性があります。
犬の行動範囲を限定し安全を確保することは、犬と飼い主双方にメリットがありますよ。
介護が必要になることも多い
年齢が13歳、14歳となってくると介護が必要になることがあります。食事の世話、散歩の介助、排泄物の世話、認知症による徘徊、寝たきり、癌などによる痛みケアなど、介護の内容は様々です。
飼い主の年齢や犬の体重によっては、この介護が飼い主にとって大きな負担になるケースも少なくありません。特に大型犬の場合は寝たきりになってしまうと大変です。床の上に寝転がった20kgを超える体を移動させながらケアしなければなりません。
また、目や耳といった機能が低下して犬自身が自分で把握できる情報が少なくなると、性格が変わってくることもあります。特定の人にしか心を開かなくなったり、飼い主の気配を感じられないと強い不安を感じるようになったりします。
さらに認知症になると夜、吠えながら徘徊したり、意味の無い行動を繰り返したりするようになります。
こうなってくると家族の生活が犬の介護を中心としたものに変わりますよね。老いていく姿を見るのは辛いかもしれませんが、愛情を持って接し、人が介護しやすく犬が快適に感じられる環境を整えていきましょう。
愛犬に合ったシニアライフを
犬も年齢を重ねてくるとできないことが増えてきます。この変化を受け入れ、無理をしない生活を送るようにしましょう。
・食事は愛犬に合った固さ・量・栄養価のものを準備する
・ブラッシングやボディマッサージで体を刺激し、心地よさと安心で心を満足させる
・ドライシャンプーや部分洗いで体を清潔に保ちながら、体を衛生的に保つ
・介護用マットやベッド、オムツなどを活用する
・服用し易い薬を獣医師にもらう
・体の痛みは薬物療法、理学療法、生活環境改善、マッサージなどで軽減する
・介護やケアは家族全員で役割分担する
こうした工夫をして、愛犬も家族も無理なく快適なシニアライフが送れるようにしましょう。寿命が長くなった分、飼い主の負担が増えた、とも言えますが、よりよい環境で天寿を全うできるよう、大切な家族に寄り添ってあげてくださいね。