季節の変わり目による脱毛
■原因
犬は春と秋の年に2回、脱毛する時期があります。冬は寒さに耐えられるよう毛が厚くなっていますが、それが春になることで抜けていき、夏用の毛に生え変わりが起きます。
また秋がやってくると、冬に備えて夏用の毛が抜けて、温かい被毛に生え変わるというサイクルを繰り返しているのです。
■対処法
この生え変わりは病気ではありませんが、放っておくと毛玉ができる原因になるので、毎日のブラッシングが必要。
また、被毛が長い犬種はトリミングに行ってケアをするのがおすすめです。ヨークシャーテリア、パピヨンなどは生え変わりがありませんが、これらの犬種に大量の脱毛が見られた場合は、病気の可能性があるため獣医を受診してください。
ノミやダニなどの感染症
■原因
毛が多い犬は、ノミやダニなどの寄生虫によって皮膚炎を起こすことがあります。
皮膚炎の影響を受けて、その周辺が脱毛を起こしますが、他にもかゆみや発疹、赤みなどの炎症症状があるのが特徴。
場所は耳の後ろから腰までの背中のライン、もしくは尻尾から肛門の周りに発疹や脱毛の症状が出ることが多いです。
■対処法
犬の毛をかき分けて皮膚の状態を良く見ると、2ミリほどの黒い虫が寄生している様子が見えます。病院で診察を受ければ、すぐに寄生されているのか判断がつきますので、早めに獣医から診てもらいましょう。
治療法は、駆除薬を直接皮膚に塗ってノミやダニを退治する方法が一般的。また、普段からノミ、ダニ取り用の薬用シャンプーを使って寄生虫を寄せ付けないことが予防につながります。
春から秋はノミやダニの繁殖期のため寄生されやすい時期です。特に念入りに、薬用シャンプーだけでなく、処方薬や市販薬のノミやダニの予防薬をつけておくのがおすすめです。
アレルギーによる皮膚炎
■原因
体内にアレルゲンが入ったことで、皮膚に脱毛が起きる症状です。強いかゆみがあるので、後ろ足で同じ場所をひっきりなしに掻いたり、噛んだり舐めたりする動作が見られます。そして、最も特徴的なのは10円ハゲなどの部分的な脱毛が多いこと。
アレルゲンはノミやダニだけでなく、食物、真菌(カビ)などが挙げられます。
■対処法
皮膚炎はアレルゲン物質を取り除くことが治療になるため、アレルゲンに触れないよう生活環境を整える必要があります。犬にアレルゲンを寄せ付けないよう部屋の掃除やシャンプーを徹底することや、食物アレルギーの場合は特定の品目を食べさせないことなどが対処法です。
フードはアレルゲンカットのものや、手作り食にするのが良いでしょう。
ホルモン性異常(ホルモン性脱毛症)
■原因
ホルモン性脱毛症は、臓器や器官の働きを調整しているホルモンの分泌が、何らかの原因で異常になり脱毛が起こる病気です。このホルモンの異常は甲状腺機能低下症があり、これは体内にあるT-リンパ球が甲状腺を攻撃し、破壊することで甲状腺の機能が低下した状態のこと。
その結果、成長ホルモンや性ホルモンなどのバランスが崩れ、体に脱毛の症状が出てくるのです。他の脱毛症と違い、皮膚に赤みや発疹の症状が見られず全身の毛が薄くなるのが大きな特徴。
主に中年を過ぎた犬が発症することが多いですが、近年は1歳から2歳半の犬も発症するケースが増えてきています。
■対処法
甲状腺機能低下症は、一日2回チロキシンホルモンの補充剤を飲み薬で摂取する治療法が一般的。ホルモン補充療法は、愛犬が生きている間毎日継続する必要があり、完治することはありませんが甲状腺の機能を管理できます。
症状が落ち着けば脱毛は少し落ち着きますが、毛が細く薄毛の状態が続くこともあります。
ストレスによる脱毛
■原因
犬は本来、飼い主と離れていることに強い不安を感じ、精神的ストレスを抱えている場合も少なくありません。このストレスを感じた際に前足やお腹を舐めるなどして、その部分が脱毛を起こすことがあります。
また、ストレスによる精神的な変化が起きると、全身の毛細血管が収縮を起こして、血行が悪くなるのも脱毛の原因に。部分的な脱毛でなく、全身の毛が薄くなる症状が出ることがあるため、愛犬の様子をしっかり観察しましょう。
■対処法
犬が感じる不安は、人で言うところの強迫症に近い症状が起こり、不安で心がいっぱいになり落ち着こうと何度も同じ箇所を舐め続ける行動を起こすのです。他にも尻尾を必要以上に噛む症状もよく見られるので、これらの状態があったらストレスの原因をできるだけ取り除いてあげることが大切。
ストレスの原因は、飼い主が忙しくあまり相手をしてやれていないことや、引っ越しなどの環境の変化、散歩に行かないなどが挙げられます。家にいる間は、できるだけ愛犬とのスキンシップを図り、不安を取り除いであげましょう。
無理にベタベタせずとも、優しく全身をなでてあげたり、ブラッシングをしてあげたりとスキンシップの量を増やすだけで、愛犬の気持ちは安定していきます。
特にブラッシングは皮膚を健康な状態に導き、脱毛症の予防にもつながります。
まとめ
犬の脱毛は大きく分けて、季節、アレルギーなどの外部的要因、甲状腺異常などの内部的要因、ストレスによる心理的要因の4つに分けられます。脱毛症の陰には、甲状腺異常など命に関わる病気が潜んでいるケースもありますので、普段よりも毛が大量に抜けると感じたら、早めに獣医から診察を受けましょう。
また、普段からスキンシップを図って愛犬に愛情を示すのも大切です。生活環境に気を配り、愛犬のストレスを減らす暮らしを心がけたいですね。