2017年11月06日

我が家の犬はなぜ太い? 遺伝子の欠損が肥満の隠れた原因かも

犬を飼い主の悩みの一つ、「愛犬の肥満」。これは、甘やかしすぎる飼い主の責任だと考えられがちです。しかし、犬の肥満の原因に遺伝子の欠陥が関係するということが発見されました。あなたの愛犬がいつもご飯を欲しそうにしているのは、実は遺伝子のせいかもしれません。肥満の原因はどこにあるのでしょう? また、解決策はあるのでしょうか?


肥満に影響する食欲を抑える遺伝子の異常

23%の犬に遺伝子が欠損

「細胞代謝」という学術雑誌に掲載された研究によると、23%の犬が、「食欲をコントロールする遺伝子」であるPOMCという部分の遺伝子の一部が欠損しているという調査結果が出ました。

遺伝子欠損により平均2kg体重が重くなる

 この遺伝子の欠損を持った犬はご飯をねだったり、食べ物をあさる傾向が10%程度増加することが分かっています。さらに、その遺伝子の欠損により、平均2kg体重が重くなるというデータも出ました。
 つまり、他の犬よりもご飯をねだるので、家族がご飯やおやつを多く与えてしまい、体重が増えてしまうようです。「うちの子は他の子よりもご飯をねだる気がする」なんて心当たりのある人はいませんか?

遺伝子欠損が多いラブラドールとその特技

ラブラドールの60%は肥満

 ラブラドールレトリーバーは特に太りやすい犬種です。アメリカでは実にラブラドールレトリーバーの約60%が肥満だと言われています。この研究では、盲導犬などの職業犬をしているラブラドールレトリーバーのうち、なんと4分の3がこの遺伝子に欠損を持っていました。
 つまり、ラブラドールレトリーバーは遺伝子欠損によって太りやすいということですが、それだけではありません。

遺伝子欠損によりしつけはしやすくなる

 この遺伝子欠損のある犬は、職業犬の素質があるのかもしれません。つまり、この遺伝子欠損によって食欲が高まるため、その食欲を利用して訓練を行いやすいということになります。
 また、トレーニングをすることで、多少カロリーを消費したり、人のためになるという満足感を与えてあげることで、肥満を防止できるかもしれません。食欲をうまく利用すれば、障害物をこなすアジリティなどのスポーツや、何かの芸を教えることも可能です。

犬の遺伝子診断の現状と展望

進む犬の遺伝子診断

 今、徐々に犬の病気でも病気の可能性を調べることのできる遺伝子診断が増えてきています。現在調べることができる代表的な病気は以下の通りです。
・進行性網膜委縮症:ミニチュアダックスフントに多い、失明を起こす網膜の病気
・変性性脊髄症:コーギーに多い進行性の脊髄の病気。現在は治療法がなく、平均3年で呼吸困難を起こして亡くなってしまうと言われています。
・MDR1遺伝子変異:コリーに発生する、薬の代謝異常。この異常があるとある種の薬の副作用が非常に強く出るので、飲ませてはいけない薬があります。

POMCの遺伝子検査も可能に?

 現在、食欲をつかさどるPOMCの異常を調べることは日本では不可能ですが、今後できるようになる可能性は十分あります。もしそれを調べて異常があれば、愛犬がご飯を必要以上にねだる傾向にあることがわかります。そうなれば、多少飼い主の自制の助けにもありますし、愛犬に芸を教え込むチャンスとなります。

愛犬の肥満問題の解決の糸口に

 犬の肥満には、甲状腺機能低下症などの病気が絡んでいることもあります。すべての犬がこの遺伝子異常による肥満ではありません。それでもこの発見は、飼い主が愛犬の傾向を知って対策を考えることの助けになるため、愛犬の肥満問題の解決の糸口になるかもしれません。今後、この遺伝子診断が可能になるといいですね。