2016年11月30日

犬の性格と遺伝子――人との関係で変化し続ける犬の遺伝子

どんな性格の犬が好きですか? 多くの人は、「人が好きでフレンドリーな子がいい」と答えるのではないかと思います。実はそんな犬の性格は、遺伝子によって決まっている可能性が高いんです。さらには、そういった犬の性格を決める遺伝子は、実は人にも共通する遺伝子なのかもしれないんです。


ヒトとの関係の長い歴史の中で身についた伴侶動物としての犬の能力

犬はペットとして何千年という歴史を持っており、これは他のどの動物よりも人間とのかかわりが長い動物です。

犬は狼の時代から人との伴侶として生きる道を選ぶ過程で、社会性を身に付けてきました。特にヒトとコミュニケーションを取ったり協力する能力は他のどの動物よりも発達しており、もちろんこの能力は先祖の狼に比べて非常に優れています。

自分で解決できない問題があるときはヒトに頼る犬

例えば、自分で解決できないような難しい課題を出されたとき、犬はヒトと肉体的なコンタクトを取ろうとします。明らかに助けを求めるような動きで近づいてきます。犬を飼ったことがあれば、経験したことがある人も多いのではないでしょうか。狼はもちろん人に頼ることはせず、自分たち自身で問題を解決しようとします。

ビーグル犬を使った行動と遺伝子の実験

500頭のビーグルで実験

スウェーデンのリンショーピング大学の研究者たちは、こういった犬の性質と遺伝子の関係について調べてみました。まず、約500頭のビーグル犬を対象に、おやつの入った瓶のふたを開けるという課題を与えました。そして、その犬たちが取る行動をビデオに撮影して観察しました。多くの犬は、自分でふたを開けることができないとわかると、その部屋にいる人と肉体的な接触を取ろうとしました。

性格が似ている犬に共通の遺伝子を見つける実験

さらに彼らは、そのビーグル犬、200頭以上のDNA解析も行いました。DNA解析に用いられたのは、GWASと言われる方法で、遺伝子の中から似たような遺伝子配列を持つ部位を探し出す検査方法です。GWASはある形質(見た目や性格などの特徴)を持つ人たちに共通の遺伝子配列を見つけるためによく使われる検査です。

ビーグル犬の遺伝子検査の結果

5つの遺伝子が見つかり、そのうち4つがヒトの遺伝子に類似

この検査の結果、ヒトに接触を求める傾向にある犬の遺伝子に共通する5つの遺伝子をもつDNA領域があることが発見されました。さらにそのうち4つは、なんとヒトの行動を決める遺伝子配列に似ているという結果もわかりました。つまり、犬と人の性格を決める遺伝子に似ている部分があるというのです。

ヒトの自閉症などの解明につながる可能性

この研究を行ったイエンセン博士は「もし、この遺伝子が他の種の犬でも確かめられたら、ヒトの自閉症などの社会性障害の解明につながる可能性がある」と話しています。

犬の遺伝子は進化し続けている

柴犬の性格も最近変化してきている?

日本では、犬は昔から番犬として、フレンドリーというよりも警戒心の強い子が人気になってきました。柴犬や紀州犬などの日本犬には、警戒心が強く、他人には攻撃的な子も非常に多かったです。しかし、ここ最近では、そういった日本犬の子も、少し前に比べるとフレンドリーな子がかなり増えた印象を受けます。この背景にはこの社会性を高めるような遺伝子を持った子が人気となり、その家系の子が増えているということがあるのかもしれませんね。

犬の遺伝子は柔軟?