2016年08月24日

犬が痒そうにしていたら要注意 疥癬(かいせん)の可能性があるかも

後ろ足でお腹のあたりをよく掻いている、体を壁に執拗にこすりつけている、こんな動きを愛犬がしていたら要注意。もしかしたらダニに感染して、疥癬(かいせん)を発症しているかも。でも疥癬なんて聞いたことがない病気ですよね。だいじょうぶ、この記事で詳しく解説しています。


こんにちは、獣医師の明石照秋です。

疥癬(かいせん)という犬の病気、知っていますか? あまり耳慣れない言葉ですし、知らない人も多いかもしれませんね。でも、この病気、周りの人や犬にうつしてしまう可能性があるんです。飼い主として愛犬の健康状態を把握しておくことはとても大事なことですから、ここで一度この病気について知っておきましょう。

どんな症状なの?

疥癬(かいせん)の主な症状は、とにかく患部が痒くなることです。なんだ、痒いだけか・・・なんて思っていてはいけません。犬は人のように加減を知りませんから、とにかく掻きむしります。結果、皮膚が裂けたりしてしまうこともあるんです。

さらにそこから細菌などが侵入すると、二次感染が起き、皮膚病も併発してしまうこともあります。なので、痒がっているだけだから、といって放置するのはとても危険です。

疥癬(かいせん)に感染すると、後ろ足で体の一部分を執拗に掻いたり、壁などに体をこすつけるようになります。このような行動が見られたら、疥癬が疑われます。

痒いことが辛いのは私たちもよく知っていますよね。それは犬にとっても同じです。早めに動物病院に連れて行ってあげましょう。

疥癬(かいせん)の原因は?

この病気を引き起こすのは、「ヒゼンダニ」と呼ばれるダニです。このダニは動物の表皮にくっついて、その表皮を主食として生活しています。

またメスのヒゼンダニは卵を生む際、表皮に2~3ミリ程度のトンネルを掘り、そこに卵を産み付けます。数ミリ程度の穴なので、痛みはほとんどないんですが、これらの過程は宿主に猛烈な痒みを引き起こします。

結果、上記のような症状が出たり、行動を取ったりするんですね。

人にもうつる可能性がある

恐ろしいことに、このダニは人に感染する可能性もあります。症状は犬と似たもので、患部が赤く腫れ、発疹ができたりします。また、犬同様、痒みの症状が出ます。

とはいえ、ヒゼンダニは人の表皮上ではあまり長生きができず、繁殖することもできないので、3週間程度で自然治癒すると言われています。
ただ感染してしまった場合、基本的には皮膚科などを受診したほうがよいでしょう。

感染のリスクが高いグループは子供や老人など、病気への抵抗力が低い人たちです。また他の病気にかかっていて、体力が落ちている場合も感染しやすくなります

疥癬(かいせん)はどこから感染するの?

気をつけなければいけないのは病気の感染経路。ここをシャットアウトできれば、病気になるリスクを大きく減らすことができます。

疥癬(かいせん)の主な感染経路は、すでにヒゼンダニに感染している犬との直接接触だと考えられています。いつもの散歩道で挨拶する、仲のいい犬とじゃれあっていたら感染していた、という例もあります。
また、多頭飼育をしている家などでは、そのうちの1匹が感染してしまうと、あっという間に広がってしまいます。

他にも、毛を梳くクシやブラシを複数の犬で共有している場合も危険ですね。これは疥癬に限らず、他のいろいろな病気も広めてしまう可能性もあるので、そういった道具類は1匹に1つずつ専用に用意することをおすすめします。

疥癬(かいせん)の治療方法は?

動物病院での治療方法について簡単に説明します。
まず、患部がどのような状態か、またどのくらいの範囲かを確認するために、疑わしい部分の毛を刈ります。ちょっとかわいそうですが、病気を治すためと思って我慢しましょう。

次に患部の状態を見て切片を取り、顕微鏡でヒゼンダニが確認できれば疥癬と診断され、痒み止めの薬や抗生物質が処方されます。また、場合によってはヒゼンダニを殺す駆虫薬を注射したりします。

あと自宅でできる治療として、薬用シャンプーを獣医さんから提案されると思います。このシャンプーには、特殊な成分が入っていて、毛穴などの奥にもきっちり駆虫成分が届くようになっています。

この病気で大事なことはきっちり治しきること

薬用シャンプーや、貰った薬を飲ませていると、数日で症状が収まってくるでしょう。ここで自己判断でもう治ったから大丈夫、と治療を中断してはいけません。症状が収まっても、ヒゼンダニが全て死んだわけではありません。ここで中断してしまうと、再びヒゼンダニが繁殖し始め、あっという間に再発してしまいます。
獣医さんから完治したとのOKサインが出るまで、治療は続けてくださいね。

疥癬(かいせん)の予防法は?

この病気には予防薬のようなものはないので、とにかく感染経路をシャットアウトすることが予防に繋がります。
上にも書いた通り、感染している動物との接触を避ける、クシなどを共有しない、などが重要です。

また日頃の衛生管理も大切ですね。愛犬がよくいるような場所や、毛布などはダニが多くいる可能性が高いです。こういった場所を常に清潔にしてあげることで、ヒゼンダニの感染だけでなく、他の様々な病気の予防にもなりますね。

この病気は他の犬や人にもうつる可能性のある病気です。愛犬の健康管理は飼い主の義務ですから、日頃から体調管理には気をつけてあげましょう。