鋭い嗅覚を発揮する職業犬
世界には数多くの職業犬がいます。ヒトの目の代わりになる盲導犬、羊を誘導したり狼などから守る牧羊犬、心をいやすセラピードッグなどたくさんの犬がヒトのために働いています。
そして、最も犬が自分の能力を発揮するのが「におい」の分野。警察犬や麻薬探知犬、災害救助犬などの犬は自分の嗅覚を頼りに、犯人や麻薬、要救助者を見つけることで、人と一緒に働いています。最近ではがん探知犬や低血糖アラート犬(飼い主の危険な低血糖を知らせてくれる犬)など、病気のにおいすらもかぎ分ける犬が存在しているんです。
ヒトと犬の世界の違い
■人は世界を見て、犬は世界を嗅ぐ
では犬のにおいの世界、いったい人とどう違うのでしょう。
まず、ヒトは主に「視覚」で世界を認識しています。一方、犬は「嗅覚」を主に使って世界を感じています。
例えばヒトは、最初に他の人に会った時、「見た目」の情報を強く意識して人を判断することが多いです。犬の場合はそれが「におい」になるのです。見るよりもにおいをかぐことで、他の動物が敵かどうかを見極めたり、個体を認識して区別したりしています。
■犬の嗅覚は「4D」の世界
そのように犬にとって大事なにおいの世界ですが、それはヒトのにおいの世界とは大きく異なっているのです。ニューヨークのバーナードカレッジには犬認知能力研究室があるのですが、その創設者であるホロウィッツ博士によると、犬のにおいの世界には「時間」と「3D」があり、その「種類」も非常に多いのだそうです。
「時間」を嗅ぎ分ける能力
■人は時間を視覚で判断する
まずは「時間」について。
我々は時計がなくても太陽の位置や影の角度、日差しの強さなど、視覚である程度の時間を把握することができます。
少し理解が難しいですが、それと同じように犬は時間をにおいの情報によって嗅ぎ分けられるんです。
■家の中の時間とにおいの変化
家の中では常に気流が発生しています。暖かい空気が壁を伝って天井に流れ、天井沿いに部屋の中央へ集まり、そこで床の方に向かうという流れがあります。この流れは時間や気温とともに変わります。それにより部屋の中のにおいも少しずつ変化します。
時間とともに変わるにおいの微妙な変化を嗅ぎ分けることにより、犬はだいたいの時間を把握するのです。
■においの強弱と密度が犬に時間を伝える
また、犬はにおいの強弱や密度などで、そのにおいがどのくらい前についたものなのかも判別することができるそうです。誰がどのくらい前にそこにいたのか、においを嗅いだだけで犬にはわかってしまうんです。
犬にしゃべる能力があれば、嘘のアリバイはすぐにばれてしまうのかもしれませんね。
「3D」を嗅ぎ分ける能力
もう一つが「3D」の機能です。
ヒトはものを見るとき、右と左それぞれの目が機能することで奥行きを判断することができます。犬は右と左の鼻のそれぞれでにおいをかぎ分ける能力を持っています。ヒトの目と同じく方向だけでなく、においまでの距離も把握することができるのだと博士は語ります。
ヒトには区別のつかないにおいも嗅ぎ分ける
犬のにおいを感じる受容体の数は、人の何億倍だと言われています。数が多いだけでなく、受容体のタイプもヒトより多いのです。つまり、我々が嗅ぎ分けることができないために同じにおいだと感じるにおいでも、犬は嗅ぎ分けているのです。
人の想像を超える犬の嗅覚
犬のにおいの世界、想像することすら難しいほど奥深いですね。
今後も新しいものを嗅ぎ分けることの犬が登場し、人の役に立ってくれる犬が増えてくる可能性は高いでしょう。どんな犬が登場するか楽しみですね。