2016年10月09日

成猫から飼い始める5つのメリットと迎える時の注意点、準備すること

里親さんを待っている猫は、子猫だけではありません。 お留守番時間やご自身の年齢を考慮した結果や、保護猫カフェで一目惚れしたなどの理由で、成猫の里親を希望する方もいるでしょう。 保護施設の元スタッフが、成猫を迎えるメリットや、気をつけたいポイントなどについてまとめました。


成猫から飼うのは難しい、慣れないというのは本当か

猫の里親を検討する人では、成猫よりも子猫を希望していることが多いですが、その理由の一つが、「成猫は慣れてくれないというから」というものです。

本当に成猫は慣れてくれないのでしょうか?
そんなことはありません。

里親募集をしている成猫は、ほとんどが「元飼い猫」です。
人に慣れている猫です。

環境に慣れるまでには子猫に比べると時間がかかる場合も多いですが、もともと人に慣れている猫であれば、余程扱いを間違わなければ、そのうち、これまでずっと一緒に暮らしていたかの様な関係を築ける様になります。

逆に子猫であっても、外で野良猫から生まれて保護された子猫で、1.5か月齢くらいまでに人間と接する機会が無かった場合は、人間に慣れるまでかなりの時間を要します。

2ヶ月齢を過ぎるまでに人と接していなかった場合は、更に難しくなり、その様な子猫を家に迎えた場合は、自宅の環境には慣れても、人にはいつまでも触らせない猫になることもあります。

猫の場合は、幼いうちに人と接触したか、というのが、人に慣れるかどうかの一番のポイントになります。

成猫から飼い始めることの5つのメリット

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成猫を引き取ることは、利点もあります。

1.性格が出来上がっているので、ある程度どんな子かわかる。

大人しい猫や甘えん坊の猫がいいなど、性格が分かっている猫がよければ、性格が出来上がっている成猫から飼い始める方がいいでしょう。
環境や接し方で変わってくる部分もあるものの、子猫よりはどんな性格なのかがわかります。

留守番時間が長いので元気すぎる猫はちょっと・・・という場合には、5歳を超えたくらいの、少し落ち着いた年齢の猫をお迎えするとよいでしょう。

2.健康面で子猫よりも安定している。

一人暮らしや共働きなど、猫と一緒にいられる時間が長くは取れない場合は、免疫力が低く体調を崩しやすい子猫よりも、成猫の方が安心です。

体が小さい子猫が体調を崩すと一刻を争う場合も多いです。

3.不妊去勢手術、ワクチン接種、ウィルス検査などが終了していることが多い。

4.子猫よりも、長いお留守番に耐えられる。

まだ甘えたい盛りの子猫だと、健康面で不安定な上に、留守番の間に寂しい思いをさせてしまうことになりますので、長時間ご自宅を空けるのは難しいでしょう。

成猫の場合は、環境に慣れるのに時間がかかることがあるので、むしろ人が四六時中一緒にいるよりも、人の気配が無い時間があった方が、新しい環境に慣れやすいという利点もあります。

ご自宅の滞在時間が少ない場合にも飼いやすいでしょう。

5.成猫でも1歳2歳なら、数ヶ月齢の子猫と、一緒に居られる時間は変わらない。

出来るだけ長く一緒にいたいから子猫から飼いたい、という人も結構多いのですが、猫の寿命が個体によって数年の差があることを考慮した場合、数ヶ月齢の子猫を迎えても3歳の猫を迎えても、どちらが一緒に長くいられるかはわかりません。

先天性の病気を持っている場合には、免疫力の低い子猫のうちに病気を発症して1歳にもならずに亡くなってしまうケースも多いことを考えれば、健康な成猫であれば、その年齢になるまでちゃんと生きていた、ということだけでも、長く一緒にいられる可能性が高いかもしれません。

また、高齢の人間が猫を飼い始める場合には、高齢の猫を引き取るという選択肢もあるでしょう。

何歳からが成猫なのか

人間だと一応「成人」になる年齢が決まっていますが、猫は決まっていませんよね。
成猫とは、何歳以上の猫をいうのでしょうか。

辞書によると「成猫」とは

十分に成長した猫。

だそうです。

猫の骨格の成長は概ね1歳で止まりますので、1歳で「十分に成長した」といえるかと思います。
(メインクーンなど、3歳くらいまで成長を続ける大型の種もあります。)

「成猫」とは1歳以上の猫を指すことがほとんどです。

里親募集に出されている成猫とは

飼い主の事情により里親募集に出される猫たち

飼い主の「飼えなくなった」という事情や、飼い主死亡で、本人や家族、知人により、里親に出されている場合は、純血種であることも多いです。

スコティッシュフォールド、ロシアンブルー、メインクーン、ブリティッシュショートヘア、ラグドール、アビシニアン、アメリカンショートヘア、ペルシャ、シンガプーラなどの人気猫種も、里親募集に出されています。

飼えなくなった飼い主が直接里親を募集している場合は、年齢や性格、これまでの治療歴、ワクチン歴などを元の飼い主から詳しく聞くことが可能です。

里親掲示板で募集が出されていることが多いです。

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多頭飼育崩壊家庭の猫たち

飼い主が不妊去勢手術を怠った為に猫たちが増え続けてしまい、飼育継続が不可能になった状況を「多頭飼育崩壊」といいます。

そのような猫たちは狭い場所で、多い時は数十頭が一緒に異臭を放つ劣悪な環境で過ごし、弱い猫は食餌も十分に取れずやせ細っていることも多いです。
感染症にかかっても、治療も受けられていません。

そういった猫たちを保護団体や地域のボランティアさんが受け入れ、不妊去勢手術、治療を行った上で里親を募集していることが多くあります。

多頭飼育崩壊家庭の猫たちは、近親交配が行われている場合が多いことが特徴です。
その為か、何かしらの障害がある場合もあります。
しかしながら、弱い猫はおそらく子猫のうちに劣悪な環境では淘汰されている可能性が高い為、残っている猫は強い生き残りと考えることもできます。

そのような環境で生きてきた猫たちであるにもかかわらず、人懐っこい猫が多く、泣けてきます。
ただ、生まれてから人に触れられたことが殆ど無いのか、警戒心の強い猫がいる場合もあります。

地域猫ボランティアによる保護猫

地域猫活動(外猫の不妊去勢手術をして世話をする活動)をしているボランティアさんたちが、怪我をした猫を保護したり、人間に慣れている猫の里親を募集することがあります。

保護団体やボランティアが保護して、成長してしまった猫

子猫を保護したものの、すぐに里親が見つから無いまま成猫になってしまう場合もあります。
子猫から人の手で育てられているので人懐っこい性格であることが多いです。
また、正確な誕生日は不明でも、年齢がわかっている猫になります。

被災地の猫

地震の被災地で飼い主を失った猫たちも、ボランティアさんたちに保護されながら新しいお家を待っています。

動物愛護センター、保健所収容の成猫

動物愛護センターに飼い主が持ち込んだ場合などでも、新しい飼い主が見つかる可能性が高い純血種の猫や、若い猫、人慣れした猫の場合には、行政が直接、または民間の保護団体を経由して、里親募集に出されることがあります。

成猫を迎える時に注意したいこと

年齢は不明なことが多い

成猫は見た目で年齢が分かりにくいため、飼い主の申告がある場合や、子猫のうちに保護された猫を除き、年齢は不明であることがほとんどです。

推定年齢が書いている場合もありますが、成猫の場合は参考程度に考えた方がよいでしょう。
歯の状態などから推定するため、引取り後に見て貰う獣医師は、別の年齢を言うかもしれません。

お見合いは、猫が過ごしている環境で猫に会うのが望ましい

猫は知らない場所では緊張してしまうため、引き取る猫は、出来る限りその猫が現在住んでいる場所や、保護されている場所で会った方が、本来の様子や魅力がわかるでしょう。

性格をある程度把握した上で引き取っても、関わり方や周囲の環境によって、猫の行動というのは変わってきます。
予想通りにはいかないこともありますので、それも全て受け入れる覚悟で引き取りましょう。

病歴、治療歴、行った検査などを詳しく聞く

不妊去勢手術、最後のワクチン接種の日付、ウィルス検査、血液検査、病歴など、これまでの経過を分かる範囲で詳しく聞いておきましょう。
特に病歴は、その猫が健康に長生きしそうかどうかの目安にもなります。

飼い主による里親募集の場合には、ワクチン証明書なども一緒に受け取るとよいでしょう。
かかりつけの動物病院が決まったら、これまでの経過について、獣医さんに説明しましょう。

すぐには慣れない覚悟をしておく

保護猫カフェなど、その猫が慣れた環境ではとてもリラックスしていても、新しい家についたら緊張します。
1日で慣れる大物の猫もいますが、数週間かかる場合もあります。
平均的な子でも10日から2週間くらいはかかるとみておいた方がいいでしょう。

里親になってすぐに撫でたり抱っこしたり出来るわけではありません。
ゆっくりと時間をかけて関係を築く心構えをしておく必要があります。

保護猫の場合には、保護されてきた時の様子もよく聞いておきましょう。
飼い主による募集の場合には、猫にとって、環境が大きく変化するのが初めてになるため、保護猫よりも慣れるのに時間がかかる覚悟をしておくとよいでしょう。
もし入院やペットホテルに泊まったことがあるならば、その時の様子をよく聞いておきましょう。

初めての場所で少しでも猫が安心出来る環境を作るために、好きなおもちゃやお気に入りのベッドなど、匂いのついたものを貰っておくといいですね。

成猫迎える準備と、迎えたらすべきこと

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準備するもの

■トイレ、トイレ砂

トイレ砂は、種類を聞いておいて、まずは同じものを用意するといいでしょう。
匂いのついた砂を少量分けてもらうと尚いいですね。
また、元の飼い主から引き取る場合は、トイレごと譲り受けると猫が少しは安心できるでしょう。

■フード、皿、水入れ

フードは、これまで食べていた種類や量を聞いて、同じものを用意しましょう。
また、引き取ってすぐには食べないことも多いので、好きなおやつなども聞いておくとよいでしょう。

■キャリーケージ

大人の猫は、必死になるとものすごい力で逃げようとするので、ハードタイプのキャリーケージを用意するのがいいでしょう。
ソフトタイプだと、猫の大きさや力によって、破壊して脱走する恐れもあります。

また、隠れている方が猫が安心するため、外から見えないようにキャリーカバーも用意しましょう。
(風呂敷やバスタオルなどをかけるだけでも大丈夫です。)

■ケージ

猫が新しい環境に慣れるまでの間は、猫が安心できる様に、ケージを用意し、その中に隠れ家を作ってあげるといいでしょう。
しばらくはケージ内で主に生活する可能性もあるため、ケージは3段以上のものが望ましいです。

知らない場所に行くと、猫はまず隠れようとします。
隠れ場所が無い場合はパニックになり、人に攻撃をすることもあります。
隠れ家は必ず用意しましょう。

■爪研ぎ

爪研ぎは家具を守るためだけでなく、猫のストレス解消のためにもあらかじめ必ず用意してあげましょう。

迎えたらしばらくは構い過ぎない

成猫をご自宅に迎えたら、水とトイレを用意して、外から見えない様にカバーをかけたケージに入ってもらい、ご飯を置いたらその日は放っておいてあげましょう。

隠れている猫を引っ張り出したり、ケージを覗き込んだりするのは猫が怖がります。

ケージの中で少しリラックス出来る様になってきたら、ケージの扉を開けて、猫が家の中を探索出来る様にします。

ケージの扉は開けっ放しにして、怖くなったらすぐに戻れる様にしておきましょう。

すぐに慣れなくても慌てない。落ち着くことが大切です。

一日二日で慣れたら、かなり慣れるのが早い猫です。
焦らずにゆっくりと慣れてくるのを待ちましょう。
心配な場合は、保護していた方にアドバイスを受けるといいでしょう。

緊張した成猫は丸一日は飲食をしないともよくあります。
口をつけた様子が無ければ、まずはおやつなど、猫が好むものをひとまず与えてみるといいでしょう。
それをきっかけとして食べ始めることも多くあります。

排泄も我慢することが多いです。
排尿が全くないと命の危険がありますので、排尿を丸一日我慢してしまった場合には、念のため動物病院に相談しましょう。

猫は人の気持ちに敏感です。
心配し過ぎると、猫にも不安が伝わってしまい、緊張がとれるのに時間がかかってしまいます。
心の中では心配しても、落ち着いて行動をしましょう。

新しい環境では、脱走に気をつける

慣れない場所では、脱走に注意が必要です。
特に、もともと外で暮らしていた猫や、暮らしていた可能性のある猫の場合はなおさらです。

パニックになると網戸なんかも破壊して逃げようとすることもありますので、脱走防止の対策は十分にしておきましょう。

慣れたら動物病院に連れて行く

特に体調を崩すこともなく、動物病院にまだ行っていない場合でも、ご自宅に慣れてきたら、一度動物病院に連れて行き、一通りの健康診断をすることをお勧めします。
かかりつけの動物病院を作っておくとよいでしょう。

もしも不妊去勢手術が終了していない猫を引き取った場合には、高齢のため、猫に負担がかかってしまうなどの特殊な例を除き、出来るだけ早く手術を行いましょう。

里親さんが見つかりにくい成猫たち

成猫からというのは、難しいようで、意外と飼いやすいんです。
もちろん難しい性格の子もいるので、そういう子は扱いに慣れている人でないと無理かもしれません。
でもそれは成猫に限ったことではありません。

これから猫を飼う予定であれば、ほんの数ヶ月しか変わらなくても子猫に比べると格段に里親さんが見つかりにくく、行き場所を失うことの多い成猫さんも、是非検討してみてください。