2016年10月17日

犬のアトピー性皮膚炎の原因と症状、治療法を解説します

犬にも人と同じようにアトピー性皮膚炎があります。犬のアトピーは原因物質の特定が非常に難しく、また完治しない可能性が高いため、一度発症したら一生付き合っていく必要のある病気です。アトピーについて詳しく知っておき、どのような対策を取ればいいのかを考えましょう。


こんにちは、獣医師の明石照秋です。

今回は犬のアトピー性皮膚炎について解説します。犬のアトピーは、直接命に関わるようなことはないものの、治療という面から見ると非常に厄介な病気です。
アトピーは体内のアレルギー反応によって引き起こされます。免疫がある物質に過剰反応してしまい、その結果有害な作用が出てしまうのですね。

治療を行うにはその原因物質(アレルゲン)を特定する必要があります。しかし、詳しくは後述しますが、アトピーの場合このアレルゲンの特定が非常に難しいのです。
そのため、有効な治療がなかなか行えず、何度も動物病院に通う必要がある場合もあります。また、アレルゲンが分かったとしても、アレルギーは基本的に完治しないので、一生付き合っていく病気になる可能性が高いです。
以下に詳しい原因や症状、治療法を解説していきますね。

犬のアトピー性皮膚炎の原因は?

犬のアトピーの原因物質は非常に多岐に渡ります。例えば、花粉、他の動物のフケ、ハウスダイストマイト、さらに食物性のものもあります。
これらのうち、アレルゲンとなっている物質を特定するためには、とても時間がかかることが多いです。血液検査などである程度目星をつけることはできますが、実際にそれがアトピーを引きおこしているかどうかは、数日、数週間それらに接触しないようにして様子を見なければならないからです。

これでアトピーの症状が緩和すれば、その物質がアレルゲンですし、緩和しなければ次の物質へ、という風にしらみつぶしにアレルゲンを調査していきます。
運良く早期にアレルゲンが見つかればよいですが、なかなか見つからない場合は、アレルゲンの特定までに数ヶ月かかってしまうこともあります。
また、アトピーに近い症状を出す他の病気の可能性も調べなければいけないので、アトピー性皮膚炎である、という診断を出すだけでも大変なのですね。

犬のアトピー性皮膚炎の症状は?

アトピーの主な症状は皮膚の炎症です。皮膚が赤く腫れ、痒みを出すので、犬はその部分をよく掻くようになります。適切な治療を行わないと、ひどい場合皮膚がただれてしまい、そこから二次感染をおこしてしまうこともあります。

脱毛がみられる、愛犬がよく痒そうにしている、最近フケの量が増えたなど症状があれば、アトピー性皮膚炎を疑い、病院に連れていきましょう。

犬のアトピー性皮膚炎の治療は?

まず、皮膚炎を起こす他の病気の可能性を探っていきます。アトピーはアレルギーなので、一生治らない可能性がありますが、他の病気であったなら完治させることが可能かもしれません。
最初からアトピーと決めつけて、完治の可能性を捨ててしまうのはもったいないので、いろいろな検査をしてアトピー以外の病気の調査をします。

他の病気である可能性が否定されてから、消去法的にアトピー性皮膚炎であると診断することが多いです。
次に、アレルゲンとなっている物質の模索を行っていきます。上述したように、いろいろな物質をしらみつぶしに調査していく方法をとります。

また、それと平行して投薬による皮膚炎の緩和治療を行います。一般的に用いられるのはステロイド剤で、病院によっては抗ヒスタミン薬を使うところもあるかもしれません。しかし、抗ヒスタミン薬が効く子はそう多くないので、最終的にステロイド剤に落ち着く場合が多いです。

治療の途中で、アレルゲンを突きとめることができたら、獣医さんから脱感作療法を提案されるかもしれません。
脱感作療法とは、アレルゲンを少量ずつ体内に入れ、少しずつ慣らしていくことによってアレルギーの完治を目指す治療法です。
現在の治療法では、唯一アレルギーを完治させられる可能性があると言われており、実際に完治した例が多く挙がっています。
しかし、完治するかどうかは個人差によるところが大きく、治療も長期間に及びます。その治療を行うかどうかは飼い主次第でしょう。

犬のアトピー性皮膚炎の予防法は?

残念ながら、アトピー性皮膚炎には効果的な予防法はありません。そのため、発症してしまったら、アトピーとどう付き合っていくかが重要になります。

アレルゲンが同定できたなら、できるだけその物質との接触を避けましょう。ハウスダストが原因なら家の掃除をしっかりする、また花粉が原因なら室内飼いにして、花粉に晒される機会を少なくするなどですね。
他にも食物が原因なら、その食べ物は絶対に与えないようにしましょう。愛犬の好物だった場合、ねだってくるかもしれませんが、心を鬼にして対応しましょう。

まとめ

犬のアトピー性皮膚炎は一度発症すると、ほとんどの場合一生付き合っていかなければいけない病気です。
しかし、飼い主が適切に対応すれば、ほとんど無症状にまで軽減することも可能ですし、愛犬にも負担をかけずに済みます。
獣医さんの説明をしっかり聞いて、アトピーについて勉強し、できるだけ愛犬に快適な暮らしをさせてあげたいですね。