2017年11月06日

犬はどっちを選ぶ?――「褒め言葉」か「ご褒美」か

こんにちは。獣医師のごっちです。 犬は「褒め言葉」と「フード」のどちらがうれしいのか? そんな研究が行われ、結果が発表されました。あなたの愛犬はどちらを選ぶと思いますか?


うれしいのは、「褒め言葉」か「ご褒美」か?

犬のしつけの基本は「褒めて伸ばす」ことであり、褒めることで犬と飼い主の関係はどんどん良くなってきます。トイレを成功した時、お利口にお留守番をしていた時、お座りやお手を覚えた時、あなたはどのように褒めていますか? 「よしよし」とほめてあげたり、ご褒美にフードやおやつを与えているのではないかと思います。さて、犬はどちらの方がうれしいのでしょう?

アメリカで行われたfMRIと行動の研究

そんな実験が行われたのはアメリカのジョージア州にあるエモリー大学。この大学では、fMRIによる検査と行動実験が行われました。

犬のうれしさを測定するfMRI検査

fMRIは脳の血流を測定できるMRIです。脳は活動が活発になるとその部位の血流が増えることがわかっています。つまり脳の血流をfMRIで見ることで、リアルタイムに脳のどの部位がどの程度、活発に動いているのかがわかります。

犬には脳の腹側後方の部分に報酬エリアと言われる部位があることが知られています。この部位の血流が増えるほど、犬に対して嬉しい報酬であるということになります。

犬のMRI検査は通常、鎮静あるいは麻酔下

少し余談になりますが、犬のMRI検査は非常に難しいです。というのも、かなり大きな音がする中で、ある程度の時間動かずじっとしていないと検査ができないためです。脳腫瘍などの病気の検査では、正確に検査をするために、鎮静あるいは麻酔下でMRI検査を行います。

しかし今回は、報酬に対する脳の動きを見る検査であり、鎮静などを使うことができないため、fMRIの装置の中でじっとする訓練をして行いました。

fMRI検査の方法と結果――飼い主の誉め言葉の方が嬉しい子が多い

おもちゃと報酬の関係を覚えさせる

MRIの中でじっとするトレーニングに成功した15頭が実験に参加しました。まず、その15頭におもちゃを見せた後、報酬を与えます。そのおもちゃの種類によって、以下のような報酬がもらえます。
・ピンクのトラックのおもちゃ→フード
・青い騎士のおもちゃ→飼い主の褒め言葉
・ヘアブラシ→何もなし

おもちゃと報酬の関係を十分に理解した後で、fMRIの検査をしました。fMRIの機械の中でおもちゃを見せて、その脳の活動を調べるという検査です。検査は、それぞれのおもちゃに対して32回ずつ行われました。

褒め言葉に報酬エリアが強く反応する子が多い

その結果、15頭すべてで、ヘアブラシに比べてトラックや騎士のおもちゃへ報酬エリアが強く反応していました。そして、トラックに2頭、騎士のおもちゃに4頭が最も強く反応しました。その他の9頭はトラックと騎士に同じくらい強い反応を示しました。

この結果からは、飼い主の褒め言葉もフードもうれしいけれど、誉め言葉の方が好きな犬が多い可能性が高いということがわかりますね。

迷路の行動実験――飼い主の方ばかり選ぶ犬も

次に、この15頭の犬に迷路の実験を行いました。単純なY字型の迷路を作り、片方の奥にはフードが、もう一方には飼い主が無言で待っています。フードの方に行くとフードを食べることができ、飼い主の方に行けば褒めてもらえるという実験です。

これを複数回行ったところ、多くの犬は特にどちらに行くという傾向が認められず、その時によって行く場所はバラバラになりました。しかし、fMRIで飼い主の褒め言葉に強く反応した犬では8~9割の割合で飼い主の方を選ぶ傾向がありました。

犬は社会性の高い動物

犬も褒められると人と同じようにうれしい

 これらの結果を受けて、この研究を行ったバーンズ博士はこう語っています。「この実験から、犬に対する社会的な報酬や賞賛がいかに大切かということがわかる。犬も褒められたときは人と同じようにうれしいのではないだろうか」

褒め言葉のご褒美を与えよう

犬は人との関係に強い喜びを感じる動物だということが、今回の実験でも証明されました。多くの子では、飼い主から褒められることが、フードをもらうことと同じかそれ以上にうれしいことなんですね。フードだけではなく、誉め言葉のご褒美も頻繁に与えてあげるようにしましょう。