2016年10月21日

盲導犬とユーザーさんのお話『べルナのしっぽ』を読んでみよう

『ベルナのしっぽ』という書籍をご存知ですか?盲導犬ユーザーの主人公であるななえさんと、盲導犬ベルナの物語です。小学校の中学年から読める書籍で、盲導犬とユーザーさんのやり取りがとても鮮明に描かれています。盲導犬のことや、家族である盲導犬を看取ること…。読み終わると涙があふれてきます。


ベルナのしっぽはどんなお話?

『バルナのしっぽ』は、作者である郡司ななえさんの体験を踏まえた小説です。盲導犬とは?盲導犬ユーザーとは?『ベルナのしっぽ』はその詳細が書き記された小説になります。

物語のあらすじ

『ベルナのしっぽ』は、主人公元永しずくさんが育児をするため大の苦手な犬を、盲導犬として迎え入れるための訓練に出向くところから始まります。最初は盲導犬といえど犬が苦手で仕方ないしずくさんは、ベルナにも心を許せずにいました。しかしベルナの素直で優しい性格に触れ、少しずつ二人の間に信頼関係が築かれていきます。
色々なことを経験し、深い信頼関係を築いた二人ですが、ベルナはだんだんと年老いていきます。年を取ってきたベルナは、次第に盲導犬としての仕事に困難を生じ始めます。ベルナを盲導犬協会に返すかどうかの選択を迫られ、しずくさんはベルナを自宅で最後まで責任をもって見届けることを選択しました。しずくさんの息子、隆太くんやしずくさん、しずくさんのご主人の隆一さんに愛されて愛されてベルナは天国に旅立ちました。
犬好きならば、涙なくしては読むことができません。盲導犬とユーザーさんの深い深い愛情の日々の物語です。

書籍のみならず、映画やドラマにもなりました!

『ベルナのしっぽ』は小説のみにとどまらず、映画やテレビドラマとして放映放送されました。そのほかにも絵本や児童書として、小さなお子さんでも読みやすく親しみやすい形で世に出ています。

原作者、郡司ななえさんについて

郡司さんご自身は、病気で27歳の時に失明されています。その体験をもとにベルナのしっぽが書かれています。初代の盲導犬パートナーであるベルナが晩年を迎えたころから「共に生きるとは何か?」をテーマに「ベルナのお話し会」という講演会を主宰されています。
ベルナの死後、二代目盲導犬のガーランドと共に講演活動を続けて、現在は三代目盲導犬ぺリラと共に、全国の小中高や企業で講演会を行っておられます。平成18年には公演回数が900回を超えています。

盲導犬とは

ベルナのしっぽでストーリーの大きなカギを握る、ベルナという盲導犬。盲導犬とはどのような仕事をするを行うのでしょうか?盲導犬について、説明していきたいと思います。

盲導犬のお仕事は?

盲導犬の仕事は、基本的に3つです。
1.道の角を教える
2.地面の段差を知らせる
3.障害物を知らせる
そのほかにも、近くのドアや改札への誘導も行います。
盲導犬がユーザーを目的地まで誘導するわけではありません。ユーザーが目的地までの地図を頭で思い浮かべ、盲導犬を誘導して目的地まで向かいます。盲導犬ユーザーが道の角などの地図を思い浮かべて盲導犬の教えてくれる曲がり角の数などを確認しながら目的地まで進みます。

犬種はどんな犬種がいるの?

盲導犬として活躍しているというと、真っ先に思い浮かぶのはラブラドール・レトリバーです。ベルナは黒のラブラドール・レトリバーでした。
ラブラドール・レトリバーのほかに、ゴールデン・レトリバーやゴールデンとラブラドールのミックスが現在盲導犬として活躍しています。

盲導犬が歩む生涯

盲導犬は子犬から老犬になるまで、どのような一生を送るのでしょうか?

パピーウォーカーさんや兄弟と一緒に育ちます(1歳まで)

盲導犬のお父さんとお母さん(繁殖犬)の間に生まれた盲導犬候補の子犬たちは、ブリーティングウォーカーのもとで約2か月間過ごします。
その後子犬たちはパピーウォーカーにそれぞれ1歳まで愛情をたっぷり受けてえ育てられます。この期間にたっぷりと愛情を注いでもらえると、人との生活が楽しいと感じるようになります。

訓練期間を経て、パートナーと二人三脚で生活します(約2歳~10歳まで)

パピーウォーカーからの愛情をたっぷりと受け、子犬たちは盲導犬協会に戻ります。盲導犬協会では稟性テスト(性格テスト)を行い、その後訓練とテストを経てユーザーさんとの共同訓練に移ります。ベルナのしっぽは、共同訓練の場面でベルナとしずくさんが出会います。
訓練では実際のハーネスを使用します。

引退オーナーや施設に入ってのんびり余生を過ごします(約10歳から)

盲導犬にとって老いは引退の目安になります。視覚に障害を持っているユーザーさんの命が危なくなってしまうリードや盲導犬としての職務に何らかの支障が出る行動が見られた場合は、引退となります。ユーザーさんと協会スタッフの方だ話し合い、引退の時期を決めます。
引退した盲導犬は、盲導犬がリタイアして入る施設や、引退オーナーという引退した盲導犬を引き取る家庭に引き取られえて家庭犬としてのんびりと毎日を過ぎします。
盲導犬は、ユーザーさんと過ごした毎日を忘れることはありません。お別れはユーザーさんと盲導犬にとって悲しい選択ですが、それぞれ別の道を歩んでも絆が途絶えることはないのです。

盲導犬とユーザーさんの絆はとても深く、愛情に満ちています

老犬になってリタイアしても、盲導犬はユーザーさんを忘れることはありません。しかし盲導犬の最期をみとるということは視覚に障害を持っている方には難しい現実もあります。ベルナのしっぽでは、しずくさんご家族がベルナの最期を看取りますが、老犬介護はとても大変です。それを家族全員で成し遂げたしずくさんご一家の深い深い愛情とベルナのしずくさんへの献身的な姿に、小説を読み終えるころには涙があふれてきます。
『ベルナのしっぽ』はどの年代の方が読んでもわかりやすく、盲導犬を持つユーザーさんの気持ちもたくさん練りこまれている小説です。

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