犬の白内障とは?
犬にも人にも起こる白内障は、水晶体が白く混濁した症状のこと。進行すると視界が悪くなり、最後には視力を失ってしまいます。特に6歳を過ぎた犬は発症するリスクが高くなり、年齢が上がるごとに症状が進行していきます。
若くても糖尿病を発症したことで白内障になるケースや、目に何らかの外傷や衝撃を負ったことで早い段階で白内障の症状が現れることもあります。また、犬種によっても白内障になりやすいタイプがあり、トイプードルやゴールデンレトリバー、ボストンテリア、シベリアンハスキーは遺伝的に発症しやすいとされています。
白内障のサインはどんなものがある?
■瞳孔が開いたように見える、白く見える
白内障の初期は水晶体のうち一部が白濁している状態で、これを未熟白内障と言います。犬の目に照明が写り込んでいるように、黒目の部分がややぼんやりと明るく見えるのが特徴で、飼い主が気づかないことも多いです。
他にも瞳孔が常に開いたように見えるのも白内障のサインの一つですので、愛犬の目の様子がおかしいと思ったら早めに病院へ連れて行ってあげましょう。
また、そこから白内障が進んだ状態を成熟白内障と良い、水晶体の全体が白く濁った状態になります。最後は白濁が水晶体内で融解を起こし、目の中に溶けた白濁の一部が確認できるようになります。
■物にぶつかる、転ぶ
白内障によって視力が落ち始めると、周囲の物にぶつかったりつまずいたりといった行動が見られます。初期は夜の暗い時間帯にのみ、物にぶつかる症状があるのが特徴で、進行すると住み慣れた室内でも周りの物につまずくようになります。
■夜鳴きをする
目が見えなくなった不安から、白内障を発症した愛犬が夜鳴きをする場合があります。今まで夜泣きをしていなかった愛犬が、突然夜に吠え続けるようになったら目を観察してみましょう。
また、不安感から周りに攻撃的になり、近づいた人に向かって吠えたり噛み付いたりすることもあるので、周囲の人にケガをさせないように注意してください。
愛犬の白内障の治療法とは?
■内科的治療
症状が初期の段階の白内障は、内科的治療として目薬を点眼する方法があります。犬によっては目薬だけで症状の進行が止まったというケースがあり、手術をしないため愛犬への負担が少ない治療法です。
しかし、毎日何回かに渡って点眼をする必要があるので、自宅を留守にすることが多い飼い主には負担が大きい治療法という側面も。
■外科的治療
水晶体が融解を起こしてしばらくすると、ブドウ膜炎や網膜剥離と言った病気に発展することがあります。これを防ぐには水晶体を吸い取る外科手術が一般的。これを「水晶体入荷吸引術」と言い、水晶体を超音波の振動によって破壊し取り除くことで白内障を治療します。
吸い取った白内障の部分には人工のレンズを装着して、犬の視力回復を目指します。進行した白内障は目薬だけでは治療できず、実際日本では白内障の進行を留めることが目的の目薬のみの使用が許可されています。
そのため、老犬になるとどうしても白内障が進行し、目が見えない「成熟白内障」や「過熟白内障」になる可能性が高いのです。こちらは視力を取り戻せる可能性が高いですが、手術費用の負担が大きい治療法でもあります。
犬の白内障の手術費用について
動物病院それぞれで治療費を設定しているので、費用はそれぞれ異なります。平均の手術日費用は次の通りですので、参考にしてみてくださいね。
・手術料…300,000円~400,000円
・検査(血液)…5,000円~10,000円
・入院(5日~1週間程度)…40,000円~70,000円
・点眼薬…5,000円~
合計 350,000円~
保険に入っていないと治療費はこのように数十万円になることが多いです。愛犬の状態によっては手術をしても視力の回復が見込めない可能性もあるので、担当の獣医とよく話し合った上で手術をするかどうかを決めましょう。
手術をしないという選択肢について
犬は人よりも視力が弱く、0,2~0.3程度の視力しかありません。さらに遠くの物もあまり見えないので普段は嗅覚や聴覚に頼って移動しています。そのため、たとえ白内障で視力がなくなっても、住み慣れた自宅であれば問題なく移動することが可能です。
実際、私の愛犬も14才で白内障が進み、視力はほとんどなくなりました。しかし、見えなくなってもトイレ、飲み水の場所まで問題なく移動します。家具など部屋の配置を大きく変えなければ、愛犬も覚えたルートでぶつからずに室内を自由に歩き回ることができますよ。
ただし、地面に色々なものを置いておくと、見えずに踏みつけてしまい転倒する事故が起こることもあります。愛犬が白内障になったら過ごしている室内を整頓し、移動しやすい環境を作ってあげましょう。
また、目が見えないので突然体に触られたり散歩中横に自転車やバイクが通ると驚いてしまったりすることも。その結果、怖がってムダ吠えをするほか、その場から動かなくなることがあるようです。愛犬が不安そうだったら飼い主が優しく声をかけながら体に触れるようにしましょう。