2016年10月20日

猫の80%は歯周病!痛みで食べられなくなる前に、歯磨きケアをしよう

猫は歯肉炎、歯周病など口内のトラブルがとても多い生き物です。悪化するとご飯が食べられなくなってしまうことも。動物保護施設元スタッフが、日頃チェックする点や歯磨きのケアについてご説明します。


猫の虫歯と歯周病について

猫は虫歯にならない

猫は虫歯にはならないといわれます。
猫の虫歯の報告というものはこれまでに無いそうです。

猫が虫歯にならないのは、猫は糖質を取らず、虫歯を起こす細菌が無いことと、歯の形状が理由になるそうです。

人間の奥歯は臼状になっていて、歯と歯が噛み合わせて食べ物をすり潰し、その部分に歯垢が溜まりやすくなります。

それに対し、猫の奥歯は尖っており、上下の歯がハサミのように肉を切り裂く仕組みになっています。
咬み合う面が少なく、また、歯の窪みも少ない為、歯垢が溜まりにくい形状となっています。

では何故、猫に歯磨きが推奨されているのでしょうか。

猫の歯周病の怖さを知ろう

猫はとても歯周病が多い生き物です。
3歳以上の猫の80〜85%は、歯肉に何らかの問題を抱えているといわれます。
歯周病は猫にとって、とても一般的で、また厄介な病気です。

猫には虫歯の原因になる菌はなくても、歯周病の原因となる細菌はあります。
歯垢が溜まりにくいとはいっても、全くつかない訳ではありません。
野生の猫は、獲物の肉や皮を咬み切ることなどで歯垢を取り除くといわれますが、キャットフードを食べる猫はそれが出来ません。
その為、歯石が溜まりやすくなり、歯肉炎の原因となります。

歯肉炎は、猫の食欲が低下する、大きな原因の一つです。

これまでたくさんの猫を見てきましたが、成猫であれば数頭に1頭くらいの割合で、歯肉炎が原因で、やや食事がし辛い様子をしている猫がいます。

また、それが更に悪化している場合は、口臭が強くなり、よだれが出て、痛みで全く食餌が摂れなくなります。
食べようとすると痛くて「ギャッ」と叫び、全く口にすることが出来ず、体重が減少します。
我慢強く、食欲もある猫が食べないというのは相当な痛みなのだと察せられます。
食べたくても食べられないのは本当に辛いでしょう。

その様になってしまった場合は、全身麻酔をして抜歯をしたり、ステロイドなどを使用して治療することになります。
猫はドライフードを丸呑みすることもできるので、歯を抜いてしまっても食餌を摂ることが可能です。
とはいっても、そうならない様に出来る限りの事は日頃からしてあげたいですよね。

歯石を除去するだけの場合も、全身麻酔が必要になる為、猫には負担がかかってしまいます。

歯周病を放置すると、外歯瘻(がいしろう)、内歯瘻(ないしろう)といった病気に発展してしまうこともあります。
歯周病菌が骨まで進み炎症を起こし、顎や目の下の頬が腫れたり、皮膚に穴が空いてそこから膿が出てくるのです。

この様な怖い歯周病を防ぐ為に、歯磨きは有効な手段となります。

歯周病の原因は歯石以外にもある

猫の歯周病の原因は、歯石だけではありません。
まだ歯石が溜まっていない様な若い猫でも歯肉炎になっていることがあります。
猫の歯肉炎や歯周病は、口の中の細菌とその猫の免疫反応が関係しているためです。
その為、FeLV(猫白血病ウィルス)やFIV(猫エイズ)などの感染症がある場合、免疫が低下し、悪化しやすくなります。

そのような場合にも、もちろん歯磨きで細菌を除去することは一定の効果があるとされますが、歯肉口内炎など、かなりの痛みが伴う病気の場合はそもそも口に触ることすら出来ないため、まずは獣医さんと相談しながら原因や症状によって治療を行いましょう。

猫の歯と歯茎の状態をチェックしよう

食べ方を観察する

ご飯を食べるときに、口の右の方、または左の方だけで咀嚼していませんか?
片方だけで噛んでいる場合は、その反対側に異常がある可能性があります。
また、ギッシギッシと顔を歪めて食べている時は、何らかの異常があるでしょう。

歯の状態を見る

奥歯の表面に歯石がついていませんか?
黄色っぽかったり、茶色っぽくなっていたら、歯石がついています。
歯石がついているように見えたら、歯石除去を行った方がいいかもしれませんので、動物病院で状態をみてもらうことをお勧めします。

歯石除去も全身麻酔を伴う為、猫の年齢や、歯や歯茎の状態によっては、それ以上悪化させないようにすることで様子を見るという選択肢もあると思います。

歯茎の色をチェックする

健康な歯茎は、淡いピンク色をしています。(黒猫は黒っぽいですが)
歯と歯茎の境目が赤っぽくなっていたら、歯肉炎です。
赤の範囲が広ければかなり悪化しています。
少し触ってすぐに血が出るくらいになっていたら重症です。

一箇所に炎症が起きていても、細菌がある為他の歯に広がっていきます。
症状が他の歯にも広がる前に、早めの処置をした方が良いでしょう。
また、もしも口を触られるのを相当嫌がったら、歯肉炎が進行し、痛みがかなり出ている可能性があります。

猫の歯磨きの方法

まずは口を触られることに慣らす

猫はおとなしく歯磨きをさせてくれるような性質ではないので、いきなり歯磨きを行おうとせず、まずは口の中を触ることに慣れて貰いましょう。
撫でている時などにさりげなく口の周りを触れてみるところから始め、その後、前歯もちょっと触ってみる、それにも慣れたら奥歯も触れてみます。

口の中を触れられるようになって来たら、水分を含ませたガーゼを指に巻きつけて、口の中に入れ、そっと歯の表面を撫でてみます。
その際、歯磨き用のジェルをつけてみてもいいでしょう。
また、歯ブラシに慣れさせるために、歯ブラシに少しウェットフードの水分を含ませて、噛ませて遊んでみる方法もあります。

可能なら子猫のうちから慣れさせていくと、口の中に触れることを嫌がらないようになります。

歯ブラシを使用して歯磨きをする

猫の歯を触れるようになったら、歯ブラシを使用して歯磨きをしてみます。
ペット用のゲル状やペースト状の歯磨きと、猫の歯の大きさにあった柔らかい歯ブラシを使用します。
歯ブラシは、ペット用のものの他、人間の幼児用のものでも代用可能です。

猫の歯は、前歯(切歯)にあたる門歯、牙にあたる犬歯、奥歯にあたる臼歯に分かれ、全部で30本あります。
最も歯垢がつきやすいのは上側の臼歯になるので、その部分を重点的に磨くとよいでしょう。

人間もそうですが、歯茎と歯の間の汚れが取れるように、歯ブラシを45度くらいに傾けて磨くのが理想的です。
軽く動かし、歯茎を傷つけないように気をつけます。
なお、歯の内側には汚れが溜まりにくいので、外側だけ磨くので大丈夫です。

猫はうがいができませんので、もちろんうがいは不要です。

猫の歯垢は約1週間で歯石になってしまうそうです。
猫の歯の為には毎日1回出来れば理想的ですが、難しければ週に2〜3回だけでも効果はあります。
猫に過度のストレスがかからない程度にやるのが望ましいでしょう。

歯磨きをされている猫の動画です。
とてもおとなしく歯磨きされていて、人も猫もかなり慣れているようです。

歯磨きが出来ない猫のデンタルケア

動画の猫のように歯ブラシをおとなしくさせてくれる猫ばかりではないでしょう。
というか、むしろおとなしく歯磨きさせてくれる猫の方が少数派かもしれません。

そんな猫たちのために、色々な歯磨きグッズが開発されています。
歯ブラシほどの効果は期待できませんが、猫が拒絶する場合は、無理してストレスをかけるよりも、できるケアだけするのでもいいと思います。
また、歯ブラシと併用してのケアとしても活用できます。

●歯磨きシート

ガーゼや市販の歯磨き用シートを指に巻きつけて歯の表面を拭き取ることで、歯垢を落とすことは出来ます。
全部の歯は出来ない場合は、一番汚れやすい奥の上の歯だけやるのでもいいかと思います。

●滴下式歯磨き

指で拭くことも難しい場合は、液体式の歯磨きを滴下する方法があります。
歯垢がつきにくい口腔内環境を作ることが出来ます。
ただ、特に美味しくは無い為、滴下も嫌がる場合があります。

●歯磨きおやつ

噛むことで歯垢を落とすタイプのおやつです。
食べさせるだけで歯垢除去が出来るなら猫も人もストレスフリーですね。

●デンタルケア用フード

噛むことで歯垢を除去し、歯垢、歯石の蓄積を低減する療法食がヒルズから出ています。かかりつけの動物病院の獣医さんの指導の元、与えてください。

猫のオーラルケアまとめ

愛猫にはいつまでも美味しくご飯を食べてもらいたいものです。
健康に長生きする為にも、普段からお口の中の様子も気にかけたいですね。
猫の性格や口の中の状態などによって、最適なケアの仕方を見つけてください。