こんにちは、獣医師の明石照秋です。
ある日、突然愛犬がおしっこをしなくなった。いつもなら散歩に行けば必ずしていたのに・・・。こんなことがあったら要注意です。今日は気分じゃなかったのかな? なんて暢気なことを言っている場合ではないかもしれません。この記事では早急に対処しないと手遅れになるかもしれない病気、犬の腎不全について説明します。
犬の腎不全って?
腎不全という言葉はほとんどの人が聞いたことがあるでしょう。人でも有名な病名ですね。これが犬でも起こるのです。腎不全とは、なんらかの原因によって腎臓の働きが弱まり、血液のろ過の機能が果たせなくなっている状態です。
この結果、尿が作れなくなり、おしっこが出ないという症状が現れるんですね。
腎不全には2種類ある
犬の腎不全は「急性」のものと、「慢性」のものがあり、症状や原因が異なります。それぞれを詳しく見てみましょう。
■急性腎不全とは
交通事故などで腎臓が直接ダメージを受けたり、尿路結石などで尿管が閉塞してしまった場合などに起こります。大きな特徴は、急におしっこが出なくなることです。昨日までは普段どおりだったのに・・・といった場合はこの病気が疑われます。
特に交通事故の場合、外傷はなくても内蔵に深刻なダメージがあったりするので、注意が必要です。
■慢性腎不全とは
腎臓に炎症が絶えず起こっていて、結果、腎臓のほとんどの細胞が死んでしまったり、リンが多く含まれた食事を与えていたり、カルシウムが少ない食事を与え続けることによって発症します。
恐ろしいのは、慢性腎不全の場合、尿が出ないという症状が現れたときには、すでに75%程度の腎臓の細胞が破壊されているということです。
また腎臓の機能は基本的に再生しないため、この状態になってしまうと回復することはありません。なので予防と早期発見が大切なのです。
腎不全で見られる症状は?
飼い主が見ていて一番気がつきやすいのは、やはりおしっこが出ない、という症状です。ただ慢性の場合は、この症状が出る前に、大量に水を飲むようになり、逆におしっこの量が増える期間があります。
この時点ならば、まだ回復の見込みがあります。おしっこが出ないところまでいってしまうと、もうかなり悪くなってしまっているので、このおしっこが増える期間、いわゆる頻尿の症状が出ている時に気がついてあげることが大切です。
他にも、急性の場合は、腎臓の痛みから歩きたがらない、背中を不自然に湾曲させて歩くなどの症状が見られることもあります。
またさらに悪くなると、歩く際にふらつく、嘔吐する、などの症状が現れます。このような症状が見られたら一刻を争う場合が多いので、すぐに獣医さんに診てもらうようにしましょう。
■なぜすぐに対応しなれけばならないのか?
腎臓の機能が低下してしまうと、本来の機能である「血液のろ過」ができなくなってしまいます。腎臓は血液中の老廃物を取り除く、とても重要な働きをしているのです。
この機能が破壊されると、血液中の老廃物などが脳に回ったりして、脳に深刻なダメージを与える可能性があります。その結果、歩く時にふらついたり、嘔吐といった症状が出るようになるのです。
この状態を「尿毒症」というのですが、最悪、この状態になってから1日、2日で死亡してしまう場合もあります。そのため、すぐに治療を開始する必要があるのですね。
お家でできる予防法とは
腎不全は発症までが気づきにくく、さらに発症してしまうと回復が難しい恐ろしい病気ですが、それを防ぐために飼い主さんができることもあります。
慢性腎不全の場合、一番の原因と考えられているのは食事中の高リンと低カルシウムです。特にリンは人が食べる食事に多く含まれているのです。人では問題ない量でも、犬にとっては多すぎるのですね。
たしかに人の食事を犬にあげると、すごい美味しそうに食べてくれて、もっとあげたくなっちゃいますね。でもそれが後々、愛犬を苦しめる結果になることもあるのです。
全くあげてはいけない、というわけではありませんが、1回の食事で一口程度にしておきましょう。
また年を取ると、腎臓の機能は低下していきます。若い頃では問題なかった量でも負担になってきます。
最近はペットの年齢に合わせて、適切な栄養バランスが考えられたご飯も売っているので、愛犬の年齢に合わせて検討していきましょう。
毎日の様子をきちんと観察してあげることが大事
病気はやはり早期発見が重要です。そのためには自宅での愛犬の様子をきちんと見てあげることが大切で、慢性腎不全ならば、大量に水を飲むようになったり、頻尿の症状が出たりします。そうなった時にそのシグナルを見逃さず、おかしいな、と思うことが大事です。
少しでもおかしいと思ったら、自己解決せず、獣医さんに診てもらいにいきましょう。また定期的に健康診断を受けることも大切なことですね。
おしっこは健康を測る重要なバロメーターですから、毎日気にしてあげるようにしましょうね。