こんにちは。小動物看護士(ドッグシッター/小動物介護士)の須永智尋です。賢い犬は飼うのが簡単と思われがちです。確かに飼いやすいのですが、それは「しっかりしつければ」であって「特別にしつけなくても楽に飼える」訳ではありません。むしろ「しっかりしつけないと暴君になる確率が高い」という困った犬です。その理由と対策を紹介します。
賢い犬は「賢すぎて困る」という事実
犬は賢く、適切にしつければ人の社会に順応し、人に対しても社交的で従順になります。
犬は人の言葉は理解できませんが、「言葉の音」と「行動」を結びつけて覚えることはできます。特定の言葉(指示の言葉、コマンド)と行動を教えることで、犬の行動を人がコントロールできます。
スワレ、マテ、フセ、コイといった指示(コマンド)を覚えてくれれば、外出先で愛犬の安全を守ったり、他の犬や人に迷惑をかける可能性がありますし、トラブルを避けることができます。
賢い犬はこうしたことを直ぐ覚えます。「なら、いいんじゃない?」と思うかもしれません。しかし、賢い犬は「飼い主や家族の顔」「態度」「経験」を細かく覚えていて、空気を読んだり、人の行動を察知することにも長けています。
このため「人のおやつをサッと取って食べた」「でも怒られなかった」「飼い主は笑っていた」こうしたことも覚えます。
「自分がソファの上でクッションを独り占めしている」「飼い主は笑って床に座っている」「自分の方が優位(強い存在)」こんな風に勘違いします。
賢い犬はこうしたことを直ぐに覚え、なかなか忘れません。そして、飼い主の甘い態度を見逃さず、しつけようとする飼い主にも「強気で反撃」します。そうすれば甘い飼い主はしつけを諦めると知っているからです。
賢い犬は「叱られなかったこと」「許された経験」もしっかり覚えています。賢すぎるので、飼い主の方も「抜け目なくキッチリとしつける」必要があるのです。
しつけのルールは徹底すること
犬をしつけるときはルールを決めましょう。そして必ずルールを守り、注意すべきことは毎回、その場で犬が理解しやすい方法で注意します。
また、指示(コマンド)を教えることだけがしつけではなく、日々の飼い主の行動、犬の行動の制御の仕方も重要です。
賢い犬は逐一、飼い主のことを見ていて、その行動から「自分の立場が上か、飼い主の方が上か」をチェックしています。隙を見せない、毅然とした態度でしつけるようにしてくださいね。
■体罰NG
犬は嫌なことはすぐに覚えます。飼い主による体罰は「飼い主は敵」と覚えてしまう原因になります。人を好きな犬になるよう、愛情をたっぷり注いであげましょう。
毎日、スキンシップを欠かさず、叱る時はその場で短く体罰以外の方法で叱ります。首元を抑える、口を掴む、といった行動は、母犬が子犬に「ダメ」ということを教える時に取る行動です。
叩く・延々と叱りつけるといったことはNGです。体に触れて、動きを封じるという方法でダメと教えるか、無視する、といった方法で叱りましょう。そして、とにかく褒めて「楽しいこと」を与えてしつけていきます。
「飼い主のいうことをきいたら嬉しいことがあった!」これを基本にしつけてください。
■人と犬の住居スペースを分ける
遊ぶスペースは共有してもOKですが、寝床は分けましょう。寝床を一緒にすると「人も犬の仲間」と犬が勘違いします。
■遊びは人の合図でスタートし、人の合図で終わらせる
遊んでくれ! と愛犬が吠えても「吠える要求」は無視しましょう。「自分の合図で遊びが始まった」と犬が覚えると、「自分の合図で群(家族)が動く」と理解し、自分がリーダーと勘違いします。
遊びを終わらせる時も、必ず人が「終わり」と合図をして、オモチャを人が取り上げて終わらせます。戦利品(オモチャ)は強い物が獲得できるので、人が保持することで「人の方が強い」と覚えさせます。
■食事は人が先
野生の動物は、強いものが先に食事にありつけます。飼い主や家族が先に食事を済ませ、その後で犬が食事をするようにします。
また、食べ物は犬が絶対に開けられない戸棚などに入れて「自分で食べ物を探し、獲得する」ということはさせません。
自分で獲得できる、ということを覚えてしまうと「飼い主から食べ物をもらわなくても生きていける」「自分は食べ物をもらう弱い立場ではない」と覚えてしまうので注意してくださいね。
女性がオスを飼う時は要注意
もし、女性がオス犬を飼う場合は注意が必要です。特に、家族に男性がいない状態で、オス犬を飼う場合は、飼う前にしつけについて勉強しておいて子犬の頃からしっかりトレーニングをするようにしてください。
多くの動物はオスがリーダーとなって群を率います。飼い犬の場合は家族が群になりますが、家族が女性ばかりだと「自分がリーダーにならなければ!」という本能が現れやすいのです。
どうしても「オスの方がメスより強い」という考え方になってしまいますし、女性の飼い主は犬を甘やかせたり可愛がりすぎる傾向があります。
このため、どんなにしつけようとしても「指示を聞かない犬」になりやすいのです。しつけに自信がなかったり、女性が初めて犬を飼うときはメスがお勧めです。
家に迎えた時からしつけスタート
しつけは「毎日のスキンシップ」「家での過ごさせ方」からスタートしています。スワレ、などを教えることだけがしつけではありません。
家に迎えたその日から、スキンシップ、ご飯、寝る場所、遊びなど、全てにしつけが繋がっています。
賢い犬ほど、このスタートが大切です。これくらい、ちょっとだけなら……という態度は賢い犬は全てお見通し! いつの間にか全然言うことを聞かない暴君になっていた! ということになりかねません。
初めが肝心。これを覚えておいてくださいね。
暴君にならないよう、賢い犬ほどキッチリしつけよう!
賢い犬ほど「飼い主の甘いところ」をめざとく見ています。そしてよく覚えていて、イタズラもよくします。
生活エリアや遊びのルールなどを予め決めておき、そのルールの中で上下関係を意識しながら、でも体罰などはなしで楽しく褒めるしつけで人の社会のルールを教えてあげてください。
ある日突然、飼い主が厳しくなると犬も混乱します。ですから、家に迎えたその日からルールを決めて接してあげてくださいね。