2017年11月06日

猫の多頭飼育。2頭目の迎え方、準備と実例

今猫がいるけれど、もう1匹いたらいいな、と考えることもありますよね。でも一番気がかりなのは、先住の猫が受け入れてくれるかどうかだと思います。私自身も多頭飼育ですが、最初に2匹目の猫を迎える時にはとても悩みました。2匹目を迎える際に準備しておくことと、2匹目を迎えた人たちの実例を、動物保護施設元職員がまとめました。


2頭目の猫を迎える決断は慎重に

先住猫のストレスを考える

もう1頭猫を迎えたいと考える理由は様々だと思いますが、一番に考えて欲しいのが、先住の猫のストレスです。

猫は縄張りを持つ生き物なので、先住の猫にとって他の猫が来るということは、縄張りを侵されるということになります。

先住の猫にとって、もう1頭猫がいる状態が本当によいのかどうか、今一度慎重に考えましょう。

先住の猫が高齢なら特に慎重に

時たま、猫が高齢になったから自分のペットロス防止のためにもう1頭迎えたいという人がいます。

高齢の猫はできるだけ穏やかに過ごしてもらいたいものです。
大きな環境の変化や、2頭目を迎えるというストレスの原因は、できるだけ作らないのが望ましいでしょう。

猫の性格にもよりますので一概には言えませんが、長年暮らしていた家に突然他の猫がやってきた時に受けるストレスは、高齢の猫の寿命を縮める結果になる可能性があります。

さらに、高齢になると様々な病気になる可能性も高く、介護が必要になるケースもあるでしょう。
その際、もう1頭猫がいても先住猫のケアがしっかりとできるか、よく考えた上での決断が必要です。

先住猫が新入りの猫を受け入れなかった時のことを考える

先住猫が新入りをすぐに受け入れることは期待しないでください。
まず拒絶するのが普通の反応です。

新入りの猫を受け入れるようになるまでは時間がかかります。
受け入れたとしても、仲良くはならないことも想定しておきましょう。
そして、いくら時間を掛けてもどうしても上手くいかない、というケースも考えておかなければなりません。

猫同士の性格によって、ストレスを溜め込んで病気になってしまうケースや、出会うたびに喧嘩をして流血沙汰になるケースもあります。

そのような時「2頭の猫たちにとってどうするのが一番幸せか?」ということを、深く考えておきましょう。

猫の里親になる場合には、2週間ほどのトライアル期間を設けている場合が多いですが、あくまでも、「何があってもその子を手放さず、生涯大切にする」という覚悟で猫を引き受けた上でのトライアル期間です。
決して「試しにちょっと飼ってみて、ダメそうなら戻そう。」という期間ではありません。

また、短いトライアル期間だけでは猫同士が上手くいくかはわからないケースもあります。

トライアル期間には先住猫、新しく迎える猫がそれぞれに強いストレスがかかりますので、トライアルがあるからといって気軽な気持ちでお試しすることはできません。

相性がうまくいく年齢、性別は?

先住の猫は若ければ若いほどいい

猫の社会化期は生後3〜8週齢くらいの本当に短い期間です。
その時期に他の猫との接触が無かった猫は、他の猫と上手くいかない可能性もあるでしょう。

先住の猫が小さければ小さいほど、他の猫が来ることを受け入れられる可能性が高いです。
2頭目を迎えるのは、性成熟する前の6ヶ月齢未満までだと受け入れやすいでしょう。

先住猫と迎える猫の年齢

先住猫の性格と年齢にもよりますが、新たに迎える猫は、先住の猫と同じか、先住の猫よりも若い猫がいいでしょう。

■先住猫がまだ成長過程の子猫の場合

先住猫が子猫であれば、同じくらいの月齢がいいです。
体格差があると、一緒に遊んだ時に一方的にやられっぱなしになる猫が出てしまいます。

■先住猫が若い成猫の場合

先住猫がまだ若い成猫の場合にも、遊んだ時に体格差が出ないように、同じくらいの年齢か、先住猫よりも若い猫がよいでしょう。

■先住猫が中年以上の場合

先住猫が、あまり遊ばなくなってきた場合には、新入りの猫があまり遊び盛りの猫だと、先住の猫にちょっかいを出して、負担が掛かってしまうケースが多いです。

かといって、同じくらいの年齢の猫だと、受け入れがたいことが多いでしょう。

先住の猫が5歳を超えているくらいの成猫であれば、仲のよい子猫を2頭一緒に迎えると、新入りは子猫同士で遊んでくれて、先住猫の負担になりにくいです。

子猫が2頭で遊んでくれれば、人間も子猫にかかりっきりにならずに済みますので、先住猫にたくさん構ってあげることができます。

先住の猫はおおらか?神経質?おっとり?

猫によって、誰とでも上手くいく猫と、誰とも上手くいかない猫、そして特定の猫が苦手な猫と、人間関係のように、様々な性格の猫がいます。

先住の猫が神経質な性格であれば、とても慎重になるべきです。
ストレスを上手く発散させずに溜め込むと、膀胱炎などの病気になることもあります。

原因が特定できない「突発性膀胱炎」はストレスが起因していると考えられており、猫にとても多い病気です。

更に、伝染性腹膜炎(FIP)も、ストレスが引き金になると考えられています。
FIPは、発症すると100パーセント死に至ると考えられている恐ろしい病気です。

また、新入りの猫が来たことによってマーキングなどの問題行動が出てくる場合があるでしょう。

先住の猫がおっとりした性格だと、あまりやんちゃな子が来てしまったら負担になるでしょう。

相性がうまくいく性別は?

オスの方がメスよりも縄張り意識が強いため、先住猫がオスであれば、より慎重になるべきです。

相性に関しては、不妊去勢がしてあれば、オスメスではそれほど大きな差は感じられません。
メス同士なら必ず上手くいくということもありませんし、オス同士でも仲良しになることもあります。

2頭目を迎える前に準備すること

隔離できる部屋、ケージ

迎えてすぐに先住の猫に会わせることはせず、しばらくは気配があることが分かる程度に、新入りは別の部屋に分けるのが理想的です。

時間をかけてもどうしても相性が合わない時には、そのまま部屋を分けて飼育することもできます。

更に、ケージがあると新入りの猫が慣れるまでの間の隠れ家になりますし、先住猫との初顔合わせがケージ越しに出来るので、ケージを一つ用意しておきましょう。

隠れ家

慣れてきても、お互いに顔を合わせたくない時もあります。
それぞれの猫が隠れられる、隠れ家を部屋の上の方や下の方に、いくつか用意しておきましょう。
ダンボール箱などでも大丈夫です。

人手の確保

しばらく隔離することを想定し、どちらの猫のことも構ってあげられるだけの人手が必要です。

また、2頭目を迎えてすぐは、ストレスによりどちらかの猫が体調を崩すことも想定されます。
通院や看病が必要な時に、一人でケアしきれないことが無いようにしましょう。

不妊去勢手術、ワクチン

もしも先住の猫の不妊去勢手術や、一年以内のワクチンをしていない場合には、必ずしておきましょう。

ウィルス検査

猫エイズ、猫白血病の検査が終わっていなければ、必ず検査をして、陰性とわかってから2頭目の猫を迎えましょう。

もしも陽性の場合には、迎える猫も陽性の猫にするという選択肢もありますが、ストレスで発症が早まる可能性もあるので慎重に考えましょう。

先住猫との会わせ方

新入りの猫を先住猫に会わせる前に、新入りの猫のワクチンと駆虫、ウィルス検査を必ず終了しましょう。
また、不妊去勢手術ができる年齢であれば、手術をします。

お互いにある程度慣れるまでには、とても早ければ数日以内、通常は数週間から数ヶ月かかることを覚悟しましょう。

慣れるまでの間は、先住の猫を優先的に構うことが大切です。

以下、先住猫との会わせ方の一例です。

【1】新入りの猫は、環境に慣れるまで少なくとも数日は隔離した部屋で過ごさせます。
隔離した部屋の中には、新入りの猫が隠れられるケージを用意しておき、ケージは布などで囲っておきます。
更にそのケージの中に、ダンボール箱などの隠れ家を入れておきます。

【2】新入りの猫が慣れてきたら、新入りは布などで全面を覆ったケージに入った状態で、先住猫を新入りのいる部屋の中に入れます。
その際、無理矢理入れるのではなく、先住猫が気にしていたら部屋のドアを開け、自分で入ってくるのを待ちます。
ケージ越しに2頭を対面させます。
猫は威嚇しますが、普通の反応なので慌てないでください。

【3】何度か繰り返したら、様子を見つつ、ケージの覆いを開けてみます。
新入りの猫がケージ内で隠れられるように、隠れられる箱などを必ず入れておきます。
新入りはケージ内で、先住猫は部屋を自由に、という対面をしばらく続けます。

【4】少しお互いの存在に慣れてきたら、先住猫が新入りの部屋にいる状態で、ケージの入り口を開けてみます。

その際、ケージの外にも隠れられる場所を複数用意しておきます。
何かあればすぐに新入りはケージに戻せるように、必ず人が見ている状態で行い、最初は短時間で、徐々に時間を増やしていきます。

【5】お互いの存在に慣れてきたら、人が見ている状態で、新入りも部屋の外に出られるようにしていき、徐々に時間を増やしていきます。

ここまで1ヶ月はかかっても、決して遅くありません。
猫たちにできる限り負担がかからないように、焦らずに時間をかけて慣らしていきましょう。

2頭目を迎えた人たちの実例

2頭目を迎えるにあたって参考になりそうな実例をまとめました。

先住猫がKYだったパターン

うちの先住も豪快というか小さい頃に猫同士で関わったことがないせいか「猫同士での遊び方が分からない仔」でした。
子猫は、拾われた家に猫が沢山いたので「猫同士の関わり方をよく知ってる仔」でした。

なので、先住にしては「遊ぼうよ~」でも子猫からすると「何だよ!」となってる時はありましたよ。
それで、私も一緒に遊んでる時は注意して見てて「先住が興奮してるな」or「あっ、怪我しそうかな?」と思ったときは、猫じゃらしなどを使って遊びを一旦中止させたりしてました(決して、先住を叱っては駄目です)
あと、少しくらいの興奮でやり合ってても「猫同士でなんとかしてくれ」という風に、ある程度は放置してました。

そうこうしてるウチに、先住も子猫にやられて「こうやって噛まれたら痛い」等が分かるようになったのと、子猫も成長してやり返していくようになってました。
今では互角に戦ってます(笑)

とにかく私は先住猫を何でも優先させる・子猫と遊んでて興奮状態になっても叱らない。を決めてました。
先住が「子猫が来たせいで、自分が怒られる・ないがしろにされる」と思わせない為です。

2頭が上手くいくようにするのには、人の関わり方も大切ですね。

先住猫がストレスで拒食、脱毛になった例

私も先住猫(メス)が7歳の時、事故にあった子猫(メス)を拾って連れて帰ったのですが、先住猫があまりのショックでエサも食べられなくなりました。
最初は子猫が事故にあってたので、つい子猫のほうにかまっていたのですが、元気になったので、先住猫の方を優先するようにしました。"
"子猫は無邪気に「遊んで!」と先住猫に飛び掛りますが、先住猫が大人の場合はとても嫌がります。しかも、一人の間が長ければ長いほど抵抗があってストレスになると思います

しばらくは先住の猫だけと寝て、先住への愛情8割、子猫への愛情2割くらいにして折り合いをつけるようにしたそうです。

先住の方はかなり、ストレス溜めました。
うちの場合食欲低下とナント!
「円形脱毛症」になってしまいました。

今ではだいぶ、落ち着きましたが、
やはり、時々いきなり「猫パンチ」して威嚇してます。
慣れるのに、半年くらいかかりました。

先住猫のストレスへの配慮が一番大切です。

どうしても相性が合わない猫がいたパターン

うちには拾ってきた猫が8匹いますが、1匹を除いてみんな仲良くしています。1匹だけは、どうしても他の猫達と相性が合わず、出会えば取っ組み合いのケンカをするほどでした。

あまりのケンカの凄さに私達家族の方が耐えられなくなったのと、いじめられているその猫がかわいそうで、結局半年位経った時に私の部屋で飼う事になりました。もう5年以上、同じ家の中でその猫だけは私の部屋と外を行ったり来たりの生活です。食事もトイレも私の部屋にあります。
何十年も猫を飼っていますが、こんなに相性の悪い猫関係って初めてでしたので戸惑ったこともありましたが、今では猫も人間も快適に過ごしています。

どうしても他の猫と上手くいかない時には、完全に他の猫に会わないで済む環境を用意してあげられるのがいいですね。
それなりに上手くいっている場合でも、お互いに一人になれる場所は作ってあげましょう。

仲良しになった例

新入りを迎え約3か月はじめは絶対に仲良くならない!と悩んでいましたが今はあの時が嘘のように、仲良しです。
今では2匹が楽しそうに、毎日運動会が開催されています。

時間をかけることは大切ですね。

先住猫への配慮が大切

先住猫へは気を配りました。食事など何でも先住猫を優先しました。先住猫が仔猫よりも立場が上ということをしっかり示しました。仔猫への態度に対しても先住猫をしかったりするのはマイナスかなと思います。
4日間くらいは全く仔猫を受け入れませんでした。もうダメかと思った5日目の朝に突然先住猫が仔猫の毛づくろいをしだしました。仔猫を受け入れた瞬間です。

子猫を毛づくろいをしたのは、いい意味で受け入れたと考えることも出来ますが、威嚇の代替えのストレス行動の可能性も考えられます。

仲良くはならないが共存出来ている例

先住の威嚇があり、1月ほど経過してから、ケージから開放すると2匹目が逆に威嚇するようになり、1年経ちます。現在は先住が優位です。
 2匹目はとても甘えっ子ですが(ついて回るし、いつも声をだしている) 先住が私の所にくると、身を引いてます。 自分の立場がわかっているみたいです。 複数匹が同じ寝床で寝ているような姿は見られませんが、大喧嘩もせず。住み分けているようです。

仲良くならないまでも上手く共存できているようですね。
喧嘩しないからといって、必ず相性がよいというわけではありません。

まとめ

別々の時期に迎えた2頭の猫が上手くいくかどうかは、猫の性格や社会性によるところが一番大きいですが、人の関わり方もとても重要ですね。

2頭迎え入れたとしたら、相性がよくても悪くても、それぞれの猫が幸せに過ごせるように十分に配慮して環境を整えれば、また猫たちの新たな魅力が見えてくるでしょう。