お乳にしこりがあったら要注意!犬の乳腺腫瘍の特徴や予防法について

お乳にしこりがあったら要注意!犬の乳腺腫瘍の特徴や予防法について

犬にも人でいう乳ガンがあります。犬の場合は乳ガンと呼ぶことは少なく、乳腺腫瘍と呼ぶのが一般的です。ガンの中でも致命率が高い病気になるので、早めに発見して適切な治療を受けることが重要です。この記事では乳腺腫瘍の特徴や症状について解説しています。


こんにちは、獣医師の明石照秋です。


乳腺腫瘍は犬では比較的発生率が高いガンです。人では乳ガンと呼ぶのが一般的ですね。雄では滅多に発生することはありませんが、避妊手術を行っていない雌では発生率が特に高くなります。
再発率も高いガンで、完治が難しいガンとして恐れられています。
今回は乳腺腫瘍の特徴や症状、治療法や予防法について解説していきます。

乳腺腫瘍の特徴

人でも乳がんとして発生があるガンなのでイメージがつきやすいかもしれません。乳腺腫瘍はその名前の通り、乳腺に発生し、次第に腫瘍化していきます。
乳腺細胞がガン細胞となり、周囲の組織を巻き込んで増殖していきます。腫瘍の中では良性であることが比較的多いですが、悪性の場合完治が難しく、転移の可能性も非常に高い厄介なガンです。


基本的に老齢犬になるほど発生のリスクは大きくなり、8歳から10歳あたりが最も好発しやすいとされています。お乳のあたりにしこりができ、放っておくと次第に大きくなっていきます。肥大化がさらに進むと患部の皮膚が裂けてしまい、出血することもあります。

乳腺腫瘍の原因

乳腺腫瘍の一番の原因とされているのは女性ホルモンです。女性ホルモンは乳腺の成長を促し、母乳の産生にも大きな関わりがあります。
ガン細胞は細胞分裂や細胞成長の過程で発生するため、成長しやすい組織はそれだけガン化する危険性が高まります。
女性ホルモンによって乳腺細胞が活発に増殖し、その途中でガン細胞が発生し、急速に腫瘍化してしまうのですね。

また、犬種や乳腺炎との関係性も疑われていますが、確実なことはわかっていません。

乳腺腫瘍の症状

最もわかりやすい症状はお乳周辺のしこりやデキモノです。最初は手で触らないと確認できませんが、ガンが進行すると目で見ても腫瘍がすぐわかるようになります。手で触って異常があればすぐに動物病院に連れて行きましょう。視認できるレベルまで進行すると既に末期状態になっている恐れもあります。
ひどい場合は腫瘍の中心部が腐ってしまい、膿や異臭がすることもあります。また、ガンが進行するにつれて犬の体力が低下していきます。
乳腺腫瘍は特に肺に転移しやすく、転移が起こると咳などの症状が見られることもあります。肺への転移は致命率が非常に高く恐れられており、乳腺腫瘍の最も厄介な症状の一つです。症状の発現が比較的遅いため、気づいたときには手遅れになっている場合が多く、乳腺腫瘍の早期の段階で治療を始めることが重要です。

乳腺腫瘍の治療

乳腺腫瘍が疑われる場合は、まず検査を行い、良性か悪性かの判定を行います。検査方法は細胞診や組織診などを用いることが多く、腫瘍を疑う部位を少し切り取り、顕微鏡で細胞の形や形態を観察します。
また、転移が疑われる場合はレントゲンを撮ることもあります。さらに詳しい検査としてCTやMRI撮影もありますが、大きな設備が必要で治療費もとても高くなるため、行うことはあまりありません。


主な治療方法は外科手術になり、腫瘍を物理的に切除します。また、その際に他の乳腺も取ってしまうことが多いです。全ての乳腺の摘出は再発を防ぐために行います。
人では乳腺の全摘は見た目の問題からためらわれることが多いですが、犬では一般的な治療法です。
悪性の乳腺腫瘍は基本的に浸潤度が高いため、かなり広範囲に渡って摘出、切除を行います。


術後、放射線治療や投薬治療によってガンの取りのこしによる再発を防ぎます。しかし、悪性の乳腺腫瘍は再発率が非常に高く、完治がとても難しいガンです。
また、肺に転移している場合は手遅れなっている可能性も高く、延命治療がメインになってしまうことも少なくありません。
そのため、早期発見、早期治療がとても重要になります。

乳腺腫瘍の予防法

乳腺腫瘍では非常に有効な予防法が発見されています。避妊手術による子宮摘出は乳腺腫瘍の発生率を大幅に下げ、子宮蓄膿症などの他の病気のリスクも低下させることができます。
女性ホルモンは主に卵巣から分泌され、乳腺に働き、増殖や成熟を促します。早期に避妊手術を受けさせることで、乳腺の発達を抑え、結果、乳腺腫瘍の発生リスクを下げることができるのですね。
子供をもうける予定がない場合は、避妊手術を受けさせることをお勧めします。発情による迷惑行動の予防にもつながります。

まとめ

ここまで乳腺腫瘍について解説してきましたが、あくまでもこれらは一般論です。ガンという病気は多様性が非常に高く、同じ部位のガンであっても症状や効果のある治療方法が異なる場合が多々あります。ネット上の知識だけで自己判断するのはとても危険です。必ず獣医さんに診てもらい、指示や治療を受けてください。
予防のところでもお話ししましたが、避妊手術は様々な病気のリスクを下げることが確認されており、デメリットも少ない有効な予防法です。子供を産ませる予定がないのなら、早期に手術を受けさせましょう。

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