2016年12月09日

犬のガンにはどんな種類があるの?そもそもガンって何だろう?

恐ろしい病気の一つであるガン。人だけではなく犬にも存在します。でも、ガンって名前は知っているけど、具体的にどんな病気か知らない人も多いのではないでしょうか?この記事ではガンの基本的な知識と犬に多く見られるガンの種類について解説しています。


こんにちは、獣医師の明石照秋です。

日本人の死亡原因の1位であるガン。ガンは多くの動物に共通して発症する病気で、犬でも発症が多く見られます。
犬種によってガンのかかりやすさ、種類などは異なりますが、ガンは犬においても高い死亡率を示し、完治が難しい非常に厄介な病気です。

ガンと聞くとそれだけで悲しい気持ちになりますが、ガンとはどんな病気かご存知でしょうか?
病気の名前を知らない人はいないと思いますが、その特徴や原因については知らない人も多いのではないでしょうか?
そこで、この記事ではまずガンについて基本的な特徴、症状などを解説します。そして、悪性腫瘍と良性腫瘍の違い、どうして動物はガンが進行すると死に至るのか、などについて説明していきます。
また、犬では特に発生が多いガンがあります。最後にそれらを紹介します。

ガンの特徴

ガンは一言で表すと、無制限に増殖する細胞群のことです。本来、細胞はある命令に従って規則的に分裂して増殖していきます。そして、分裂した細胞が成熟すると再び分裂してその数を増やしていきます。また、寿命を迎えた細胞は自身で死を選び、このサイクルによって全体の細胞数は適切な数に保たれ、正常な活動が保たれているのです。

しかし、稀に命令を聞かずに自分勝手に分裂、増殖を始める細胞が発生します。ただ、ほとんどの場合は免疫細胞がこの異常な細胞を発見し、排除するため大きな問題にはなりません。
ところが、免疫細胞がこの異常な細胞を運悪く見逃してしまうと、ガン細胞として無秩序な増殖を始め、いずれ手のつけられない大きな腫瘍へと変貌してしまうのです。
実は、ガン細胞は結構な頻度で発生しています。ただ、免疫細胞がしっかり働いてくれているため、腫瘍化することは滅多にないのですね。
しかし、年を取るにつれて免疫細胞の働きが弱くなっていきます。そのため、徐々に腫瘍化するリスクは高まっていくのです。ガンが老齢の動物に発生しやすいのはこのためです。

悪性腫瘍と良性腫瘍の違いって?

ガンは悪性だと危険とよく言われますが、そもそも悪性と良性の違いは何なのでしょうか?

良性腫瘍の特徴

良性腫瘍はほとんどの場合、増殖が遅く、腫瘍の周囲が膜のようなもので覆われています。そのため、肥大化しても他の正常な組織に浸潤することはほとんどなく、機能を破壊することもあまりありません。
それでも、大きくなりすぎると周囲の組織や内臓などを圧迫するようになるので、必ずしも命の危険がないとは言い切れません。
ただ良性腫瘍の場合、転移している可能性が低いので、外科手術によって腫瘍を取りきれる可能性が高く、再発の可能性が低いことが特徴です。

悪性腫瘍の特徴

対して悪性腫瘍の場合は、細胞の増殖が異常に早く、周囲にも膜がないことが多いため、容易に他の組織内にガン細胞が浸潤していきます。
ガン細胞に浸潤されると組織や内臓は破壊され、機能を失ってしまいます。また、血管やリンパ管に浸潤した場合、細胞が血液やリンパ液に乗って全身を巡り、他の場所で定着します。そして、その部位で再び増殖を開始し、周囲の細胞、組織を巻き込んで腫瘍化していきます。これがガンの転移と呼ばれる現象です。
また、外科手術でガンを切除しようとしても、ガン細胞が周囲の組織にも浸潤しているため、完全に取りきることが非常に困難です。そのため、ガンの切除手術の場合は、実際の腫瘍よりも大きな範囲をまとめて切り取ります。
しかし、少しでもガン細胞が残ってしまうと、そこから再度ガンが発生してしまいます。これがガンの再発ですね。
以上のように、悪性腫瘍は転移しやすく、術後の再発率が高いことが特徴です。

犬で発生が多いガン

犬で発生が多いガンは犬種によって大きく異なります。ある犬種でほとんど見られないガンが、他の犬種では非常に発生しやすいということもあります。
ここでは一般的に犬全体で発症しやすいガンを紹介します。

乳腺腫瘍

人で言う乳がんですね。ほぼ雌での発生で、お乳のあたりにしこりができます。乳腺腫瘍には有効な予防法があり、避妊手術を行うことで発生確率を大きく下げることができます。

口腔腫瘍

犬では悪性黒色腫(メラノーマ)の発生率が特に高いです。名前の通り、黒っぽい腫瘍が口の中にできるのが特徴で、悪性であることが多く、厄介なガンです。

脂肪腫

脂肪腫では体の表面にぽっこりしたデキモノができることがあります。悪性率はそこまで高くなく、切除すれば完治することが多いです。

まとめ

ガンは体のどの部位からでも発生する可能性があり、原因となった細胞によって特徴や症状が大きく違います。そのため、治療が難しく、発見が遅れてしまうことも多いです。
インターネット上にはガンに関する様々な情報がありますが、必ずそれらに当てはまるわけではなく、盲信するのは危険です。
比較的気がつきやすい特徴として、体表面のしこりやデキモノがあります。これらが愛犬で見られた場合、ガンである可能性もあるので早めに動物病院に連れて行きましょう。
ガンは早期発見、早期治療が重要になるので、特に老犬の場合は常日頃から体調の変化などに敏感になってあげることが大切です。