2016年11月11日

ひとり暮らしで猫の里親になる方法。8つのポイントを押さえよう

ひとり暮らしだって猫と暮らしたいですよね。でも里親では、ひとり暮らしはお断りのこともあります。それには理由がありますが、ひとり暮らしだって猫と暮らせますし、里親になることも可能です。そのための準備を動物保護施設元職員がまとめます。


猫の里親募集で一人暮らし、同棲が敬遠される理由

今後の生活の変化のリスク

猫の里親を探す人は、その猫に関わった以上、猫が二度と路頭に迷うことの無い様にする責任がありますし、猫に幸せになってもらいたいと思っています。

そのため、できる限り「安全な」方に猫を引き取ってもらいたいと考えます。猫にとっての「安全」とは、猫と暮らす環境が整っているのはもちろんですが、暮らす環境に変化が無いということになります。

ひとり暮らしや同棲の場合には、結婚している家庭よりも生活や同居人の変化の可能性が高くなります。本人が飼い続けるつもりでも、結婚、出産の機会に、相手や相手の親から猫を手放す様にいわれることもあります。

猫を譲り渡すのが知人や友人で、信頼できることがわかっている相手であればいいのですが、初対面の相手が「安全」であるかどうかを見極めるのは大変難しいです。

そのために、リスクができる限り低い相手を譲渡先として限定しておくというのは、猫に安全な環境を与えるための一つの手段となるのです。実際に、ひとり暮らしは猫と暮らす上で様々なリスクがあります。

一人暮らしで猫と暮らすリスク

■猫が体調を崩した時の世話

猫が体調を崩せば、病院に通ったり、家で毎日投薬や強制給餌、看病などをする必要が出ることもあります。ひとり暮らしで外でフルタイムで働いている場合には、通院が難しかったり、家で十分な看病をする時間が取れないリスクがあります。

■本人が入院や死亡した時の世話

いくら健康でも、いつ病気や怪我をするかはわかりません。
何かしらの理由で、どうしても飼育継続が不可能になった時にも、猫が路頭に迷わない様にする必要があります。同居する家族がいれば、万一本人が猫の世話を出来なくなってもなっても家族がそのまま世話を継続できますが、ひとり暮らしだとそうはいきません。

また怖いのは、孤独死です。
保護施設で、これまでに何度か飼い主の孤独死で行き場を失った猫を保護したことがあります。室内飼育されていた場合、猫に逃げ場は無く、何日もご飯を食べずに取り残されているのです。

■経済的なリスク

単身の場合、稼ぎ手は本人のみのため、万一稼ぎが無くなった時に同居家族の収入に頼ることが出来ません。経済的に困窮した時に、真っ先に切り捨てられるられるのはペットです。

一人暮らしで猫と暮らすための8つのポイント

ひとり暮らしで猫を飼育するには、上述した様なリスクもありますが、それらを想定した上でしっかりと準備をすることで、猫と暮らすことは可能です。

猫と暮らし始めるには、一人だろうが大家族だろうが、しっかりと環境を整え、様々なリスクを想定して飼育し続けることができるかを熟慮する必要がありますが、ここではひとり暮らしで猫と暮らす時には絶対に考えておかなければならない8つのポイントを紹介します。

1.いざとなった時に助けてくれる人を確保しておく

猫と暮らし始めてから、病気や怪我で自分が猫の世話をするのが辛い時、また入院、やむを得ない事情による外泊などがあることを想定し、その様な時に猫の世話を頼める人を複数確保しておくのは大切です。

その際には、猫の世話をしに自宅に来てもらうことのできる信頼の出来る人物である必要があります。近隣に住む家族や友人がいれば、日頃から猫に会いに来てもらい、猫がその人物に慣れておくのが理想的です。猫を飼い始める前に、いざとなった時に頼めるかどうかの確認をしておきましょう。

更に、万一経済的に困窮した時や、もしも猫よりも先に死亡してしまっても猫が路頭に迷うことのない様に、万一の際に猫を引き取ってもらうことが出来る人を確保しておくことも絶対に必要です。保護団体では、保証人や後見人を立てることで一人暮らしでも譲渡を行っていることも多くあります。里親になる際には必ず確認されます。

2.留守番環境を整える

■事故防止をする
ひとり暮らしに限りませんが、家で猫だけになる時間帯に猫に危険が無いように、目を離していても安全な環境を整えましょう。誤飲、誤食、落下、感電、熱中症などの事故防止のために、物を片付けて、室温管理をしっかりしましょう。

また、危ないからといって留守番の間に猫をケージに閉じ込めるのは、猫にストレスがかかるので避けましょう。閉じ込めなくても危険がなく、快適に過ごせる環境作りをすることが大切です。

■退屈しないような工夫
また、一人でも楽しく遊べるおもちゃや、遊びながらご飯を食べるパズルフィーダーなどを使用して、日中に猫が退屈しない様な工夫もしてあげられるといいですね。

■カメラで見守ることも出来る
留守番の間に猫の様子が心配な場合には、カメラを設置して外出先から猫の様子を観察することも可能です。

■トイレ、水、ご飯
留守番時間が長い場合には、トイレを複数用意しましょう。トイレが汚れているとトイレ以外で排泄をしてしまう可能性の他に、排泄を我慢したりストレスを感じて病気になることもあります。

たっぷりの水の他、給餌の時間が開いてしまう時には自動給餌器を使用する方法もあります。

3.帰ったら猫の相手だけをする覚悟をしよう

猫は散歩も要らないし、ずっと構っている必要も無いし、睡眠時間が多くひとりで留守番も出来るし、シャンプーしなくても綺麗、トイレのしつけも不要と、一緒に暮らしていてもあまり手が掛からない大変独立した生き物です。そのため、ひとり暮らしの人が同居するのには向いているといえます。

しかしながら、その様な印象が一人歩きしているためか、初めて猫と暮らす人では「猫がこんなになつくとは思わなかった」という方が多数います。一緒に暮らす人間がやるべきことは、健康管理やトイレ掃除だけではありません。猫は人間になつきますし、愛情を必要としています。また、猫がストレスなく暮らすためには、たくさんの運動をさせる必要があります。

その猫の相手を一人でやることになるので、日中外出をする場合には、帰宅後は猫の相手だけをするくらいの覚悟が必要です。自宅で仕事をしている場合には、仕事の邪魔をされることも覚悟しましょう。

十分に相手をしてあげられないと、猫にストレスがたまり、病気になったり問題行動を起こす原因にもなります。

4.一人暮らしで迎えるのに向いている猫

ひとり暮らしで猫を迎えるのであれば、子猫よりも成猫、一頭よりも二頭で迎えると猫にとってはいいでしょう。猫の性格によっては一頭で迎えた方がいい場合もあります。

■事故の危険が少ない猫

遊び盛りの子猫は、一頭で留守番をするのは寂しがる他に事故の危険が成猫よりも増えます。
目を離す時間が長い場合には、少し落ち着いた成猫を迎える方が安全です。

■体調が安定している猫

また、小さいうちは体調を崩した時にあっという間に悪化することがあります。一刻も早い診察や治療が必要な時に病院に行けないことがあっては危険です。外出があるならば体調面で安定するくらいの月齢(6か月齢以上くらいが目安)の出来るだけ健康な猫を迎えるのがいいでしょう。

とはいっても、家に迎えてしばらくは環境の変化で体調を崩しやすくなりますので、どんな猫であろうと迎えるのは出来るだけ一緒にいられる時間が取れる時期が望ましいです。

■留守番が長ければ寂しくない様に

留守番は子猫は寂しがります。留守番があるならば、若い遊び盛りの猫や、仲の良い兄弟姉妹のいる猫であれば二頭で迎えるのが望ましいです。一頭でいることの好きな猫であれば一頭で迎えましょう。

5.子猫から迎える場合の注意点

ひとり暮らしでも子猫から一緒に暮らしたいという場合には、それなりの準備と心構えが必要です。
里親になる場合には、成猫はOKでも子猫であれば一人暮らしの方はNGとなることが多いです。

■体調を崩した時の対策

前述した通り、小さな子猫のうちは体調を崩しやすく、また事故の危険性が高いので、目を離す時間があるのは危険です。目を離す時間が出来るだけ少なくなる様に時間を調整することで、子猫を迎えるのは無理ではありません。日中外出がある場合には、日中だけ世話を頼める人に来てもらう、または暫く外出がない時期を選んで猫を迎えることにするなどです。

特に猫と暮らすのが初めてであれば、体調の異変を見逃す可能性があるため、どんなに小さくても4ヶ月齢は超えている猫を迎えるのが望ましいでしょう。
小さい子猫で体調異変に気づくのが遅れると、最悪の場合、命に関わることがあります。

子猫に限りませんが、近隣の動物病院を必ず調べておきましょう。

■事故防止の対策

子猫は何にでも興味を持つので、月齢や性格によっては少し目を離すだけでも危険なことがあります。

落下事故は、4〜5ヶ月齢未満のまだ小柄な猫に多いため、小さいうちには高すぎるキャットタワーを控える、カーテンに登ってしまわない様に工夫するなどの対策をしましょう。月齢にかかわらず、人間の食べ物や、誤飲などの危険のあるものは猫が開けられない容器に収納しましょう。3ヶ月齢未満の小さな猫であれば、少し目を離す間は事故防止のためにケージがあると便利です。

■子猫はとてもよく遊ぶ

家で仕事をしてる場合は、目を離す時間が少ないので健康面の管理や事故がおきない様に見守ることは出来ますが、子猫がいると仕事どころではないかもしれません。

子猫はほとんど寝ていますが、起きている間はほとんどずっと遊んでいます。一般的にイメージする「猫」という落ち着いた生き物とは別の生き物であると考えておくことをお勧めします。

人がどんなに忙しかろうとお構いなしに邪魔をしまくります。忙しいからと別の部屋に入れてドアを閉めようものなら、ずっと鳴いたり、ドアをなんとか開けようとドアノブにジャンプしまくったりと呼び続けることもあります。

子猫であれば一頭で迎える場合には、相当な時間と心の余裕が必要でしょう。仲の良い二頭であれば、お互いに遊んでくれますので、一頭よりも邪魔されないでしょう。

■離乳前は目が離せない

保護してしまった場合を除き、離乳前の子猫をわざわざ迎えようと考える方はあまりいないと思いますが、離乳前の子猫は24時間ケアが必要になるので、自宅で仕事をするか、仕事を休まない限り一人でケアをするのは難しいでしょう。

小さいうちならば職場に連れて行くことが可能な場合もありますが、猫の負担を考えれば、拾ってしまったなどのやむを得ない事情がない限りお勧めしません。

6.安定した仕事は必須

いざとなった時のに頼める人を確保するにしても、猫を迎える際に安定した仕事があることは必須です。

経済的に安定していることはもちろん、転職で住まいが変わったりすることがあれば猫にとって負担になります。

7.結婚、転職など将来の変化を想定する

猫がいる間に転職をする場合、猫がいるために思った仕事につけない可能性も考慮する必要があります。

ひとり暮らしの場合は、出張や残業が多い仕事は避けなければなりません。
もしも猫がいることで選択肢が狭まることを受け入れられないのであれば、猫と暮らすのは諦めるべきです。

転職で転居することになったが、転居先では猫が飼えないから里親を探して欲しいという無責任な飼い主に出会ったことは一度ではありません。

また、上述しましたが結婚する可能性がある場合には、その相手や相手の両親や親戚に猫を手放す様に言われることがあります。
その時には猫を手放すしか無いな、と考えるのであれば、やはり猫と暮らすべきではありません。

8.最終的には責任感があるかどうかが大事

里親募集サイトで気に入った猫がいても「一人暮らし、同棲の場合はご遠慮ください」と書いてあるからひとり暮らしではダメなんだ、と考える方もいますが、全てに書いてあるわけではありません。

同じ団体でも子猫や手のかかる猫の場合にはその条件を記載していて、成猫であれば記載が無いこともあります。

また、保護団体は最終的には人柄(責任を持って飼育する人かどうか)を判断して譲渡を行うため、特に実績のあるNPO法人などは特別「一人暮らし不可」の条件を入れていなかったり、保証人や後見人がいることを条件として、面会して話し合った上で譲渡を行っていたりします。

ひとり暮らし不可のところの猫を無理に交渉するよりも、ひとり暮らし可の団体から迎えるのがいいでしょう。

もちろん一人暮らし可であっても、上述した様な最低限の対策や猫を迎える準備が出来ていないと里親になることは出来ません。

猫は一人暮らしの良いパートナーになる

どの様な方法であれ、猫を迎えたら最期まで飼育をする責任が生じます。

人間と違って相性が合わないから別居や離婚するというわけにはいかないので、単にひとり暮らしだと寂しいから飼いたい、という安易な気持ちで飼い始めることは出来ません。

しっかりと準備や対策をして、自分の生活スタイルにあった猫を迎えるならば、猫はひとり暮らしのよいパートナーとなり、人生を豊かにしてくれるでしょう。